コラム

Facebookとファクトチェックという難問

2019年03月05日(火)15時31分

ザッカーバーグのファクトチェックに関する見方とは...... Francois Lenoir-REUTERS

<デマやフェイクニュースが横行していることがよく知られるFacebook。今後、どういう方針でフェイクニュース対策を行っていくのだろうか ......>

Snopes.comは都市伝説や真偽の怪しい噂を客観的に検証する「ファクトチェック」のウェブサイトで、1994年に設立された老舗だ。私もよく参照している。このSnopes.comが最近、Facebookとのファクトチェックに関するパートナーシップを終了したことが話題となった。

ファクトチェックを外部団体に協力を依頼していたが

Facebook上でデマやフェイクニュースが横行していることはよく知られている。対策としてFacebookは2016年から第三者ファクトチェックを導入し、外部のファクトチェック団体の協力を仰いできた。

Snopes.comもその一つだ。Facebookが審査対象としたコンテンツに関してファクトチェッカーが正確性を評価し、コンテンツが間違いと判定されると、ニュースフィードでの表示順位が下がったり、ファクトチェッカーによる反駁記事と一緒に表示されたり、あるいはそうしたコンテンツを常習的に公開したりシェアしたユーザは広告等の機能が使えなくなったりするらしい(デマをばらまくのは大体が金儲け狙いである)。ちなみにこのブログを書いている2019年3月4日現在、日本には提携ファクトチェック団体は存在しないようだ。

ただ、この枠組みが有効に機能しているかというとお世辞にもそうとは言えないようで、例えば反ワクチンのデマは 依然としてFacebook内を飛び交っている(反・反ワクチンこそがデマだという方には申し訳ないが、そういう方にはぜひ明治大学科学コミュニケーション研究所のワクチン有害説に関するページを読んでいただきたい。まあこれも、一般へのアピールという点では工夫の余地が多々ありますね)。The Atlanticの記事によれば、こうした投稿の多くはごく少数(7つ)のFacebookページが由来らしく、たかだか7つのデマ源すら押さえ込めないのであれば、これはなかなか難しいと言わざるを得ない。

有用なデータを出さないFacebook

Snopes.comは最初無償でFacebookに協力していたらしいのだが、その後、年に10万ドルもらうようになった。しかしFacebook社員の年収中央値が24万ドルというご時世に、16人でやっているSnopes.comには10万ドルというのはいかにも少ない。Facebookはファクトチェックにエンジニアを数人雇う金すら出さないのか、という批判は免れないように思う。

また、Snopes.com 側の不満として、ファクトチェックに有用なデータをFacebookが出さず手作業が多いというのもあったようだが、そもそもSnopes.comはおろか、FacebookはEUにもデータを満足に出さないらしく、 フェイクニュース対策への取り組みへの真剣度を疑われても仕方がないだろう。

プロフィール

八田真行

1979年東京生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。一般財団法人知的財産研究所特別研究員を経て、現在駿河台大学経済経営学部准教授。専攻は経営組織論、経営情報論。Debian公式開発者、GNUプロジェクトメンバ、一般社団法人インターネットユーザー協会 (MIAU)発起人・幹事会員。Open Knowledge Foundation Japan発起人。共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、『ソフトウェアの匠』(日経BP社)、共訳書に『海賊のジレンマ』(フィルムアート社)がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正米アップルCEOがナイキ株の保有倍増、再建策を

ビジネス

仮想通貨交換コインベース、予測市場企業を買収 事業

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏勝

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、幅広い業種で買い優勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story