最新記事
感染症

反ワクチンのプロパガンダをフェイスブックが助長!? 対策を求める動き

2019年2月18日(月)18時00分
松岡由希子

麻疹(はしか)の感染者増加が世界的に問題になっている Jovanmandic-iStock

<世界保健機関(WHO)は、予防接種への躊躇が麻疹感染者の増加の一因とみているが、SNSが予防接種への躊躇や不安を拡大させているとして問題になっている>

米国では、2000年に麻疹(はしか)の排除状態を達成したものの、2008年以降、毎年、感染者が発生し、2019年に入ってからも2月7日までにワシントン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州を含む10州で101名の感染者が確認されている。60名の感染者を抱えるワシントン州では、1月25日、ジェイ・インスレー知事が非常事態宣言を発令した。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、麻疹感染者が増加する要因として、国外からウィルスが持ち込まれる輸入感染に加え、ワクチン未接種の人が多い地域で麻疹がさらに流行しやすくなっていると指摘する。

SNSで拡散された反ワクチンの偏った情報

とりわけ、被接種者である子どもやその保護者における予防接種への躊躇はグローバル規模で深刻な課題となっている。世界保健機関(WHO)では、予防接種への躊躇が麻疹感染者の増加の一因であるとみており、「世界の健康に対する10大脅威(2019年版)」のひとつにも挙げている。

ワクチン反対運動を推進する活動家や団体からの偏った情報やメッセージがソーシャルメディアネットワーク(SNS)を通じて拡散され、予防接種への躊躇や不安感を煽っているとの見方もある。

英紙ガーディアンは、2月1日、「ワクチン反対を訴えるプロパガンダの拡散をフェイスブックが助長している」と報じた。

この記事では、「ワクチン接種」をキーワードにフェイスブックのページやグループを検索するとワクチン反対を訴える複数の団体が上位表示されたほか、25歳から44歳までの女性ユーザーを主な標的として「ワクチン接種が乳児を死なす」といった虚偽の文言を含む広告がフェイスブック上で表示されていたことを明らかにしている。また、ガーディアンの取材に対し、フェイスブックはワクチン反対運動団体からの広告出稿を認めているという。

フェイスブック拡散が麻疹の感染増加につながっている?

ワクチン接種の拒否を促す情報やメッセージがフェイスブックで拡散されることが麻疹の感染増加につながっているとして、フェイスブックに対策を求める動きもでている。カリフォルニア州選出のアダム・シフ下院議員は、2月14日、フェイスブックの最高経営責任者(CEO)マーク・ザッカーバーグ氏に公開書簡を送付した。

シフ議員は、この公開書簡において「フェイスブックやその傘下の画像共有サービス『インスタグラム』上で子どもへのワクチン接種をやめるよう保護者に促すメッセージを表示させたり、推奨したりしていることは、米国の公共衛生に直接的な危機をもたらしている」と懸念し、「ワクチン接種に関して医学的に正確な情報をユーザーに提供するべく対策を講じることを要求する」とザッカーバーグ氏に訴えている。

フェイスブックは、米通信社ブルームバーグの取材に対して、「この問題に対処するための追加的措置を検討している」とコメントしている。

今後は、より質が高く、信頼できる情報を確実に提供する一方、指摘されているような種類の投稿コンテンツを推奨から除外したり、検索結果の表示順位を下げるといった措置を講じる方針だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中