コラム

プーチンにとっても「戦争」は割に合わない...それでも挑発を続ける「勝算」とは

2022年02月01日(火)19時24分

第3に、プーチンは欧米がウクライナをロシアから引き離そうとしていると考えていて、それをロシアの安全を脅かす動きと捉えている。ウクライナの国民、特に若い世代の間では、ロシアに背を向け、NATOとEUへの加盟を支持する人が増えている。プーチンは、(アメリカが糸を引く)怪しげな勢力がウクライナ国民の「ロシア恐怖症」をたきつけていると批判してきた。

プーチンは、軍事的緊張を高めることにより、ウクライナのNATOおよびEUへの加盟を差し当たり阻止できると計算しているのだろう。その予測はおそらく正しい。

しかし、NATOが加盟国の拡大に関してロシアに「拒否権」を与えることはあり得ない。ウクライナが欧米に接近する流れを変えることも不可能だ。

戦争を起こせば、ウクライナの多くの地域を実質的支配下に置けるかもしれないが、ウクライナの国土が荒廃し、国民の反ロシア感情が高まることは避け難い。しかも、多くのロシア兵が命を落とし、経済制裁によりロシア経済はますます困窮するだろう。

そうした代償を払ってまでウクライナに侵攻することは、ロシアにとって割に合う選択だとは思えない。プーチンはどこかで「勝利」を宣言し、緊張を徐々に和らげていくことになるだろう。

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グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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