コラム

ハメネイ体制が直面する「2つの破滅」...追い詰められるイラン指導部の苦悩とは?

2025年05月07日(水)14時45分
最高指導者のアリ・ハメネイ師

©IRANIAN SUPREME LEADER'S OFFICEーZUMA PRESSーREUTERS

<反体制派弾圧をやめれば保守派が反発、核を手放せば抑止力を失い「壊滅」が待っている...>

イランの指導部は50年近く、アメリカを中東から追い出し、イスラエルを壊滅させることを目指してきた。

その目的を達成するために、中東各地に自国の息のかかった武装勢力のネットワーク「抵抗の枢軸」を築いてきた。

しかし、この10年ほど、イランが国内外で置かれている状況は厳しい。最高指導者のアリ・ハメネイ師は現体制の運命を左右しかねない決断を迫られている。


2017~19年にかけて、イラン全土で失業率と物価の高騰、そして政府の腐敗に抗議するデモの嵐が吹き荒れた。

22年には、1979年の革命により現体制が発足して以来最大規模の反体制デモが行われた。きっかけは、22歳の女性がヒジャブ(頭部を覆うスカーフ)を「不適切に」着用していたとして逮捕され、その後死亡したことだった。

23年10月には、パレスチナ自治区ガザにおける親イラン武装勢力ハマスがイスラエルを攻撃。それを受けたイスラエルの軍事作戦により、ハマス、レバノンの武装勢力ヒズボラ、イラクの武装勢力などの「抵抗の枢軸」は大幅に弱体化した。昨年12月には、シリアのアサド政権も崩壊した。

イスラエルは、空爆によりイランへの直接攻撃にも踏み切った。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領は、イランが核開発を停止しなければ、さらに攻撃するという脅しを強めている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story