トランプがぶち上げた「ガザ100万人強制移住計画」の既視感

テルアビブにあるディアスポラ(離散)の歴史を展示した博物館のレリーフ SODABOTTLE/WIKIMEDIA COMMONS
<トランプがぶち上げた「ガザ100万人のリビア移住計画」。荒唐無稽なのはもちろんだが、歴史を考えれば、このような「不正義」はユダヤ人が身をもって体験してきたことでもある>
トランプ政権のアメリカでは毎日のように常軌を逸したことが起こり、民主主義と経済の繁栄が急激に破壊されている。ホワイトハウスが主導するファシズムと腐敗があからさまになる日々の中で、トランプ政権がパレスチナ自治区ガザの民族浄化の計画を検討しているというニュースは、(少なくともアメリカのメディアでは)ほかの多くのニュースに埋もれ忘れられてしまった感もある。
5月16日の米NBCニュースの報道によると、トランプ政権は、最大100万人のガザの住民をリビアの砂漠に移送することを計画している。これにより、トランプ大統領が今年2月に述べたように、アメリカがガザを長期にわたり「所有」して「中東のリビエラ」に様変わりさせ、パレスチナとイスラエルの紛争を解決すると同時に莫大な利益を獲得しようという思惑なのかもしれない。トランプは、アメリカと世界に君臨する皇帝にでもなったつもりなのだろう(もっとも、米当局はこの計画に関する報道を「事実でない」とコメントしている)。
ガザの現状は悲惨を極めている。2023年10月に今の戦争が始まって以降、イスラエル軍はガザの住宅の70%近くを一部もしくは完全に破壊。死者は5万人を超す。WHO(世界保健機関)によると、ガザの人口の約4分の1に相当する50万人近くが深刻な食糧不足に陥っている。
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