五輪に迫る危機:情報機関、安倍首相それぞれの役割
こうしたことは、全て政治の問題だ。いくら情報機関が精度の高い情報と分析を用意しても、それだけではこれらの問題への答えは出ない。政治リーダーがある程度主観的な判断を下すことは避けて通れない。
新型コロナウイルスの感染拡大に対する安倍の対応は、これまでのところあまりに小規模で、あまりに遅い。遺伝的な要因や手洗いの習慣などの面で日本はほかの国と違う、と考えていたのかもしれない。しかし、データを見る限り、日本でも一挙に感染が広がり始めているようだ。
対応を判断することは、ある意味テロを事前に察知したり、パンデミックの発生可能性を正確に把握したりすることより困難だ。今夏の東京五輪は延期以外の選択肢が事実上なかったとは言え、リスクや損得のバランスを考えてその判断を下すのは安倍の仕事だった。
予定どおり来年夏に東京五輪が開催されれば、日本やほかの国々の情報機関の努力により、安倍の選択肢は広がり、大会はより円滑で安全に実施されるだろう。しかし、もし情報機関が新型コロナウイルスによる国家的な大惨事を予測することがあれば、五輪どころの話ではない。
<2020年5月5日/12日号「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

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