コラム

日本とアメリカ「株価の差」はここにある...丸井グループを赤字からのV字回復に導いた「人的資本経営」の力とは?

2025年05月21日(水)18時44分
レオス・キャピタルワークス代表取締役社長 藤野英人氏

レオス・キャピタルワークス代表取締役社長 藤野英人氏

<ファッションビルやクレジットカード事業を展開する丸井グループを赤字から救ったのは、江戸時代からあった「古くて新しい」経営方法だった──>

企業の成長鈍化と従業員のエンゲージメント低下には密接な関係がある。国際競争力を取り戻し持続的に成長し続けるため、旧態依然とした組織は変革を迫られている。

日本の資産運用会社、レオス・キャピタルワークスが運営するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画投資家が注目!"ヒト"への投資!その理由とは?【いいじゃんニッポン!#1】のキーワードは「人的資本経営」。

【動画で見る】丸井グループを赤字から救った「人的資本経営」とは?

そのパイオニアとも言われる株式会社丸井グループの取り組みから、「ヒト」を生かすことで成長を続ける企業の戦略を紐解いていく。

丸井グループは、ファッションビルの丸井やクレジットカード事業を行うエポスカードなどを傘下に持つ持株会社。1931年、当時は高級品だった家具を月賦で販売する企業として創業し、1970年代からはヤングファッションに注目。「ファッションの丸井」のイメージを定着させた。

2008年にリーマンショックの影響を受けて一時低迷するも2010年頃からV字回復を遂げている。この背景にあるのが「人的資本経営」だ。

人的資本経営とは、会社の根幹である人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値の向上につなげる経営手法。レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人氏によると、20年ほど前から日本に導入されたが、その考え方自体は江戸時代からあったという。

江戸時代に活躍した近江商人の代名詞に「三方よし」という言葉がある。これは、売り手と買い手が適正な利益を得て満足するとともに、それが社会(世間)全体の幸福につながるべきだという共存共栄の精神を表している。

根底にあるのは、顧客や社会を幸せにするにはまず自分たちが幸せでなければならないという考え方だ。

しかし、その後は近代的経営の導入にあたり、人を「コスト」や「材料」であると捉える経営手法に切り替わっていった。しかし、ストレスやうつ病など従業員のメンタルヘルスが悪化したことで、人的資本経営が注目されるようになったのだ。

丸井グループは、いち早く人的資本経営を導入した会社の1つ。丸井 営業企画部部長、沓掛奈保子氏は言う。

「業績が赤字になった時期から、過去の成功体験を引きずってあまり革新をしない企業風土を改革する取り組みを20年以上続けてきた。しかし、最初から人的資本経営を意識していたわけではない。従来の『強制』『やらされ感』といった企業文化から、『自主性』『楽しさ』を皆で追求していく企業文化への変革を目指し、社員一人ひとりの活性化を図ってきたことが、結果的に人的資本経営の実践につながっていった」

具体的には、社長と若手社員がフランクに会話できる場の提供や、社員の意向を最大限叶えるジョブローテーションを実施している。安くておいしい社食に定評がある丸井グループの社員食堂には、青井社長の「定位置」が存在する。席が空いていたら年齢や役職に関係なく着座可能で、今考えている企画や将来像、雑談などを話すことができるのだ。

また、「毎回新社員」をキーワードに、いつでもフレッシュな気持ちで働く環境も丸井グループの特徴。異動や出向により多様な業務を経験する機会を与えることで、風通しのよい職場づくりに努めている。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

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