コラム

学生時代から政治に興味...安野貴博がいま政治の道を選んだ理由とその勝算 「やりたかったことにテクノロジーが追いついてきた」

2025年08月22日(金)07時50分

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安野氏の参院選での第一声(7月3日、渋谷駅前) 筆者撮影

 そのあたりはAIで何か改善できますか。

安野 AIを含めてもそうなんですけど、その前段階としてメールをしっかり使うとかそういうところだけでも。

 連絡は未だに電話なんですか?

安野 電話もありますし、FAXもありますし。例えば何があったかと言うと、これも別に選挙管理委員会の人たちを批判する意図ではなく今こうだという話なんですが、掲示板ポスターってあるじゃないですか。選挙の時に顔写真がいっぱいあるやつ。あれがどこにあるのかっていう一覧表がないと、ポスターを張ることもできないじゃないですか。

 掲示板の所在地の住所一覧みたいなものですね。

安野 そうです。それで、住所一覧はメールで欲しいじゃないですか。ピュッと貼り付けて返ってきてほしいじゃないですか。でも、それをしてくれるところはほとんどないんですよね。

 FAXで流れてくるんですか。

安野 「取りに来い」と。紙で、やっぱりすごい量なので袋の中にどさっと積まれていて、というのが基本的なオペレーションなんですよね。しかも、県の県庁に取りに行けばその県の分を全部もらえたら、それはいい方です。

基礎自治体の庁舎に取りに来いということもあってですね。なので、例えばある県では77個ぐらい基礎自治体があるわけですが、その全部の基礎自治体に行って「この自治体の掲示板一覧をください」って言ってもらいます。

 それは若者が思い立って政党を作ろうっていう場合に、かなり優しくないですよね。

安野 優しくないです。これは全国に組織がある前提ですよね。新規参入者はあまり想定されていないんですよね。政党ベースでどれくらい新規参入があるべきかというのはありますが、私はやっぱり政治経験がない人が新しく入って行きやすいルール作りをした方がいいと思うんです。手続きを含めて、見直すべきところがたくさんあると思います。

 やっぱり、やってみないと分からないことがありますね。

安野 これは知らなかったですね。

 それに改善点なども見えてきたから、政治家になったことも成果ですけれど、なるための過程を見れたというのも貴重ですね。

安野 はい。やっぱり、やってみて分かることはかなりたくさんありましたね。

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ニューズウィーク日本版-YouTube

「喘息治療薬」に関する炎上とその後の改善

 蒸し返すようで申し訳ないんですが、公示直前に喘息治療薬に関するプチ炎上みたいなものがありました。その背景と当時のご心境、状況打破のために何やったかといったところを改めて聞いてもいいですか。

安野 これは色々な発信をしていく中で、喘息治療薬に関して問題のある発言をしてしまいました。そこに関連して、改めるべきところを改めてしっかりと訂正と謝罪を行ったのですが、我々は色々なご指摘受けながら考えをより良くしていくことが基本だと思っています。ある意味、問題がある部分に関してご指摘をたくさんいただいて、それによって考えを改めていけるということは健全なプロセスの一環なのではないかな、とは思っています。

 私が気になったことは2点あって、まずご著書の中にもあるのですが、チーム作りで安野さんが大切にされていることは、報・連・相の手続きを踏むよりも「許可より謝罪」という言葉を使っていらして、スピードを速く対応することに注力しているんだ、というようなことを書いていらっしゃいました。

だから、この問題は医療系のブレーンとの議論とか発言の吟味が足りなかったのかな、と考えてしまったんですがそのあたりはいかがですか。

安野 足りなかったんだと思います。足りなかったと思うので、そこをきちんと体制も増強してやっていかないといけないということになります。

 では、今はそのあたりも何とかされているのですか。

安野 今、完璧なのかと言うと、まだまだ正直全然完璧じゃないです。ただ良くなってきてると思うので、今後、色々問題がある部分があったら指摘していただきたいなと思っています。

 必要な部分が分かったから、それを何て言うかピンチをチャンスに変えて?

安野 チャンスまで行けるかどうかは分からないですけれど、しっかりと反省すべき点は反省していくべきだと思います。ただ、100点を全部出すのも無理なので、100点じゃないと発信しないというよりかは、もちろん物によりますけれども、しっかりとこうだと思いますっていう意見を言ったうえで、それがもし課題があれば反省する。ただ何も言わないということではないという、このバランスを取ることだと思っています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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