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白砂青松の海岸林よりも雑木林が津波に強い? 横国大が東日本大震災前後の航空・衛星写真を分析
1987年に「白砂青松100選」が選定されるなど、海岸のクロマツ林は日本の原風景として定着している(写真はイメージです) scott mirror-Shutterstock
<横浜国立大・佐々木雄大教授らの研究チームが、東日本大震災で津波被害を最も受けた宮城県の海外林を対象に、津波到達前後の航空・衛星写真を用いて、被害程度や樹木の分布状況を評価した>
海岸林(※海岸防災林、防潮林などとも呼ばれる)は、日頃の防風や防砂の機能だけでなく、津波や高潮の勢いを弱め、沿岸部の住宅や農地への侵入を防ぐ役割があることが知られています。とりわけ、約1万6000人の死亡者の9割が津波被害によるものだった2011年の東日本大震災を契機に、津波被害を最小限に抑える海岸林の樹木構成について注目されるようになりました。
海岸林は大きな津波の発生時に、流れに対する抵抗となって津波エネルギーを減衰させたり、船などの漂流物を押し留めたり、居住区域に津波が到達する時間を遅らせたり、津波にさらわれた人がすがりつく対象物になったりすることで、防災に貢献すると考えられています。一方、東日本大震災で起きたような巨大な津波では海岸林は無力であり、それどころか倒されたり切断されたりした樹木が新たな漂流物となってさらなる被害を生むという意見もあります。
どのようにしたら津波に強い、頑丈な海岸林を作れるのでしょうか。これまでの研究では、コンピューターのシミュレーション計算によって「単一種よりも複数の樹木を混交した海岸林のほうが、風や津波などの攪乱に対する脆弱性が低い(風や津波に対して頑丈)」と示されていましたが、実際に単植海岸林と混交海岸林との間で津波による被害程度を比較した研究はほとんどありませんでした。
横浜国立大学大学院環境情報研究院の佐々木雄大教授らの研究チームは、東日本大震災で起きた津波前後の海岸林を衛星写真や航空写真で評価しました。その結果、クロマツと広葉樹の混交海岸林はクロマツ単植海岸林よりも津波による樹木の減少割合が小さく、津波に対して頑丈である可能性が示唆されました。詳細は自然災害に関する学術誌「Natural Hazards」オンライン版に16日付で掲載されました。
日本では古来、海岸にクロマツが意図的に植えられて「白砂青松」の景勝地を作ってきました。海岸林は、本当は雑木林のほうがよいのでしょうか。日本の海岸林の歴史についても概観しましょう。
8世紀の書物に記録が
山が多く平地が少ない日本では、古くから人口が沿岸部に集中し産業が発達しました。けれど、自然災害の多い我が国では、台風による高潮や地震による津波によってしばしば大きな被害を受けました。
海岸近くの林が風や砂、波を防護する機能を持つことは、古くから経験的に知られていたようです。植林によって意図的に海岸防災林が作られた記録が書物に現れ始めたのは、8世紀頃です。常陸風土記(721年)によると、慶雲年代(704〜707)の若松浦の松原(茨城県神栖市)は、防砂機能のため伐採が禁じられていました。室町時代(14~16世紀)には、長崎や土佐にクロマツ林が植栽されたといいます。