コラム

日本人には瞑想よりもマインド風呂ネスがいい(TransTech Conferenceより最終回)

2019年02月21日(木)18時00分

銭湯カルチャーは瞑想にもうってつけ? kyoshino/iStock.

エクサウィザーズ AI新聞から転載

今回の記事のタイトルをちょっとふざけた感じにしちゃったけど、日本人って銭湯のおかげでシリコンバレーの一歩先を進めるんじゃないかって、結構真剣に考えている。

人間の脳が、現代社会に最適化されていない、ということは、これまで論じてきた通り。その結果、うつ病などに苦しむ人が増えている。

そうした事態を打破しようと、シリコンバレーを中心に米国では瞑想や座禅、マインドフルネスなどが流行している。実際にマインドフルネスなどの瞑想が、人間の精神面に大きなプラスの効果をもたらすことは、既に科学的に証明されている通りだ。うつ病などの精神疾患に効くだけでなく、直感力やクリエイティビティを高める効果もあると言われている。

ただ瞑想って簡単じゃない。20分以上ただじっと座っているだけというのは、多くの現代人にとって苦痛以外のなにものでもない。

正しく瞑想できているのかどうか、なかなか自分では分からないし、瞑想の効果を実感できるようになるまでに、かなりの年月が必要だ。多分、脳内の回路が、思考に絡みとられている状態から、必要なときだけ思考を使う状態に切り替わるまで、時間がかかるのだと思う。

うまくできているのかどうか分からないまま、何ヶ月も何年も、瞑想を続ける。そんなことができる人はそう多くない。なので多くの人が途中で挫折する。

でもじっと座って行う瞑想だけが、「fundamental well being(基本的な幸福)」の状態や、「Persistant Non Sinbolic Experience(PNSE、継続的非記号経験=悟りのようなもの)の状態に入るための、唯一の方法ではない。ジョギングやサーフィン、スイミングなどのスポーツを通じても瞑想に入れるし、プログラミングなどのアクティビティに熱中している状態も、一種の瞑想状態だと思う。

多幸感を知ると体が風呂を求める

僕の経験では、じっと座っているより、身体から瞑想に入るほうがよほど簡単にPNSEに入れると思う。

僕のお気に入りは、隠ヨガ。非常にスローなヨガだ。一つ一つのポーズに時間をかけるヨガで、気がつくと心が静まり返って、瞑想状態に入っている。

最近のおすすめは、サウナや銭湯だ。サウナで約10分温まって水風呂で20秒冷やすという温冷交代浴を3セット行ったあと、20分ほど横になったり座ったりして瞑想する。身体中を血液が行き渡る感じに意識が集中することで、思考が止まり、心が穏やかになる。うまくいけば多幸感に包まれる。この方法なら、ほぼだれでもが瞑想状態に入れると思う。

この多幸感の気持ちの良さが分かるようになれば、体が勝手にサウナや銭湯を求めるようになる。週に2、3度、半年も銭湯に通えば、シリコンバレーで一生懸命瞑想しようと努力している起業家やエンジニアよりも、瞑想の効果を実感できるようになっていると思う。

幸い日本には、まだまだ街中に銭湯が残っている。日本って、そういう意味でとても恵まれていると思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃

ワールド

シリアで米兵ら3人死亡、ISの攻撃か トランプ氏が

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story