コラム

マズローの欲求5段階説にはさらに上があった。人類が目指す「自己超越」とは

2018年12月18日(火)16時00分

ビジネスで成功し、自己実現を果たしても満たされない経営者が多いのには理由があった vladwel/iStock.

エクサウィザーズ AI新聞から転載

11月に米シリコンバレーで開催されたTransTech Conference。共同主催者のJeffery Martin博士が基調講演の中で、マズローの欲求5段階説の6番目のステージ「自己超越欲求」について説明している。

「AIが進化するなら人間も進化しなきゃ Transformative Technology Conferenceに行ってきた」という記事の中でも簡単に触れたが、アブラハム・マズローの欲求5段階説とは、衣食住という基本的なニーズが満たされれば、人から好かれたい、自分の可能性を最大限に発揮したい、という欲求に移行するのだ、という話だ。正確には「生理的欲求」が満たされれば「安全欲求」。それが満たされれば「社会的欲求(外的に満たされたい)」。そして「尊厳欲求(内的に満たされたい)」「自己実現欲求」という5段階の欲求を、人間は登っていくのだという。

1218yukawa.jpg

Jeffery Martin

僕は大学教育をアメリカで受けたので日本の大学で5段階説がどの程度教えられているかは知らないけど、マズローの欲求5段階説は米国で大学教育を受けている人なら全員が知っている話だと思う。Martin博士も「だれもが5段階欲求説のピラミッドの図を、高校か大学の教科書の中で一度は見たことがあるはず。アメリカ文化の中で一番有名な心理学の話の1つだ」と語っている。

その5段階説が実は6段階だったと言うのだから、驚きだ。「多くの人は知らないと思うが、マズローは死の直前に人生が別の形で拓くことに気づいたんです」とMartin博士は語っている。

マズローは1970年6月に亡くなるまでの2、3年間は重い心臓病を患っていて、その「別の形」について論文にまとめることはできなかった。だが、登壇したあるフォーラムでその「別の形」について語っている。

マズローは、それをHigh-Plateau Experienceと呼んだ。「高原経験」とでも訳せばいいだろうか。Kripperという研究者が心理学の学術誌「Journal of Transpersonal Psychology」にマズローの発言を引用している。

1218yukawa.jpg

Jeffery Martin

マズローは次のように語ったのだという。「(喜びとか悲しみとかの感情の)ピークが過ぎ去れば、とても素晴らしいものが沈殿物のように残る」「(そこに残るすばらしいものとは)統合された意識のようなものだ」「統合された意識とは、聖なるものと普通のものを同時に認識できる意識状態と定義してもいいだろう」「ただじっと座って、1時間でもその(普通であり、聖なるものであるというものを)じっと観察することができる。そしてその瞬間瞬間を楽しむことができる」「そこには感情はなく静けさがある」。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ビジネス

エヌビディアやソフト大手の決算、AI相場の次の試金

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資

ワールド

焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 4
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 9
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story