コラム

「元気をもらう」の正体は心臓から出る電磁場 TransTechカンファレンスから

2018年11月30日(金)16時00分

ポジティブな人が1人いると周りも感化されるのは電磁場のなせる業? Guzaliia Filimonova/iStock.

エクサウィザーズ AI新聞から転載

「前向きな人に会って元気をもらった」。そんな表現を耳にすることがある。しかし実際に「元気をもらう」などということが、果たして可能なのだろうか。シリコンバレーで開催されたTransTechカンファレンスでは、「元気をもらう」というメカニズムを科学的に解明している研究者が登壇していた。Deborah Rozman博士で、同博士が所属するHeartMath Instituteのサイトに、関連する論文「The Energetic Heart」があったので読んでみた。それによると、心臓は電磁波を出していて、周りの人にいい影響を与えることが可能なのだという。

1130yukawa1.jpg

論文によると、心臓は体の中で最も大きな電磁場を形成しており、心電図で測ることのできる電磁波の振り幅では、脳波計で計測できる脳波の振り幅の60倍にもなるという。また心臓の発する磁場成分の強さは脳が発する磁場成分の5000倍もあり、細胞組織に邪魔されることなく、1~2m離れた場所でも計測が可能だという。

科学的な論文なので「これが元気をもらうメカニズムだ」とは断言していないが、規則正しい心臓の電磁波のリズムが周辺の人の体にも影響を与えると結論づけている。

脳が必ずしも感情を司っているわけではなかった

この論文でおもしろいと思ったことの一つは、脳が必ずしも感情をつかさどっているわけではないということだ。

1990年代までは、脳だけが感情を生成していると考えられていたが、最近は脳と身体の共同作業を通じて、認識や思考、感情といったものを生成しているという考え方が主流になりつつあるという。特に心臓が、感情の生成において重要な役割を果たしていることを示す実験結果が幾つか登場しているようだ。最近の神経心臓学では、「心臓は感覚器官であり、大脳皮質が関与しない学習や記憶、決定を可能にする、高度な情報のエンコーダーとプロセッサーの中心的な役割を担っている」と結論づけているという。

大脳皮質は、知覚、随意運動、思考、推理、記憶などの高次機能を司っているが、大脳皮質が関与しない脳の活動に関しては、心臓が中心的な役割を果たしているということだ。

心臓が出す電磁波、音圧、血圧のリズムは、身体中の全ての細胞によって感知される。つまり心臓が体の細胞、臓器の同調シグナル発信機の役割を果たしているという。ちょうどオーケストラにおける指揮者の役割を、心臓が担っているようなものかもしれない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウ大統領、和平案巡り「困難な選択」 トランプ氏27

ワールド

米、エヌビディア半導体「H200」の中国販売認可を

ワールド

プーチン氏、米国のウクライナ和平案を受領 「平和実

ビジネス

ECBは「良好な位置」、物価動向に警戒は必要=理事
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story