コラム

「元気をもらう」の正体は心臓から出る電磁場 TransTechカンファレンスから

2018年11月30日(金)16時00分

最近の研究では、心臓が発信するリズムの中に情報が込められており、特に神経やホルモン、電気などの低周波の振動の中に、感情に関する情報が込められている可能性があると指摘されているという。

心臓が発信する信号で最初に脳に到達するのは電磁波で、次に神経系の信号が8ミリ秒後に到達。血圧の信号は240ミリ後に脳に到達するのだという。また心電図の波の形を継続的に観察すると、微かながら複雑に変化していることが見て取れる。なので心電図の波の形の中にも情報がエンコードされている可能性があるという。

AIが感情を持つことが可能かどうか。よく議論になるテーマだ。この論文を読む限り、人間の感情には脳以外の身体も大きく関わっており、脳のメカニズムだけを電子回路で真似しただけでは人間の感情のようなものは再現できない、ということが分かる。

ポジティブな感情が心臓と脳をシンクロさせる

心臓のリズムと脳のα波は自然とシンクロすることが分かっているが、特に心にポジティブな感情を思い浮かべているときは、心拍のリズムが非常に規則正しくなり、その結果、α波のリズムも心臓にシンクロし、規則正しいものになるという。

そして心臓と脳波が規則正しくシンクロし始めると、呼吸のリズム、血圧、皮膚の電気信号のリズムなどもシンクロし始める。こうした状態をこの論文の著者は「身体的一貫性」と呼び、身体的一貫性が達成されれば、身体が最も効率よく働き始め、精神的、身体的な様々な恩恵を受けることになるとしている。例えば、毛細血管や細胞組織における液体交換、通過、吸収の効率が向上するほか、心臓血管系の循環ニーズに対する適応能力が向上するという。その結果、免疫力が向上することになる。また認識力が向上し、思考がクリアになり、感情が安定。その結果、幸福度が向上するとしている。

仏教や武道などで言われる「心身一如」には、この論文が言うところの「身体的一貫性」に通じるところがあるのかもしれない。

さて身体的一貫性は、睡眠中や深いリラクゼーションの中で達成されることが多く、通常の目が覚めた状態で身体的一貫性に達することはまれだという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ安全保証、26カ国が部隊派遣確約 米国の

ビジネス

米ISM非製造業指数、8月は52.0に上昇 雇用は

ビジネス

米新規失業保険申請、予想以上に増加 労働市場の軟化

ワールド

ガザ市で退去命令に応じない住民が孤立 イスラエル軍
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 8
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story