タリバンと中国共産党が急接近する必然の理由

毛沢東もケシ栽培と農村中心戦略で勢力を拡大した CARLOS GARCIA RAWLINSーREUTERS
<アフガニスタンの「新政権」を中国が事実上容認するのは両者に驚くほど類似点があるからだ>
イスラム原理主義を信奉する神学生をルーツとするタリバンがアフガニスタン全土をほぼ掌握した現在、彼らは国際社会からの国家承認を切望している。
いち早く事実上容認しているのは、国連安保理常任理事国の中国。急接近している背景を探ると、両者に多くの類似点がある。
第1に、中国共産党とタリバンは思想の面で本質的に近似している。中国共産党は、共産主義以外の思想と哲学が中国に根を下ろして大きく成長するのを絶対に許さない。キリスト教やイスラム教も名目上は存在するが、限りなく共産党の下位組織と化してほぼ原形をとどめていない。
古代から存続してきた多くの宗教施設も建国直後から取り壊され、現在もなお継続されている。「宗教の中国化」も習近平(シ ー・チンピン)政権だけが強力に推し進めているのではなく、初代の指導者・毛沢東時代からの伝統を踏襲しているにすぎない。
タリバンも同様だ。イスラム社会の多様性を一切許容せずに彼らが解釈する唯一絶対の「イスラム」だけが正統とされている。事実、以前に政権の座に就いたときにはシーア派などの少数派を公開処刑して弾圧した。また、人類の文化遺産であるバーミヤン大仏を「偶像」崇拝だとして爆破して世界に衝撃を与えた(その仏教遺跡が眠る地の鉱物に、中国が触手を伸ばしている)。
タリバンが独自に解釈するイスラム法も中国共産党からすれば「宗教」の範疇に入るが、両者の利益が衝突しない限り、相手を利用することは可能である。
第2に、両者の成長を支えた経済的基盤が共にケシ栽培だ。中国共産党は1935年秋に陝西省北部の延安と内モンゴル南部のオルドス高原に逃亡してきた直後からケシを栽培し始めた。アヘンに加工してモンゴルとライバルの国民党支配地域に転売し、1950年まで莫大な軍資金を得ていた。そして麻薬の中毒者が増えたのも支配階級が腐敗しているからだと、責任を国民党とモンゴル社会に転嫁した。
タリバンの資金もケシ栽培に大きく依存している。彼らはアヘンをカーフィル(異教徒)に輸出して欧米社会を疲弊させることを躊躇しない。前回首都カブールを制圧した際もその撲滅を約束したが、国際社会を欺く方便にすぎなかった。今回も同様の約束を標榜しているが、当然、国際社会からの経済的支援を条件とするだろう。
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