タリバンと中国共産党が急接近する必然の理由
第3に、どちらも農村から都市を包囲するという戦略で政権を獲得した。ソ連とコミンテルンの援助で生まれた中国共産党は当初、上海や広州など都市部での革命活動に重点を置いていた。
その後、熾烈な内部闘争を経てソ連の影響はそがれ、「山奥から誕生した共産主義」が主流となった。毛沢東派である。彼らは農村部を革命根拠地にし、都市を孤立させて全国制覇を実現した。毛の革命路線はアラブ各国を含む全世界に輸出され、無数の信者が実践した。
タリバン指導者がアラビア語版の毛語録を熟読していたかどうは分からないが、彼らの2度にわたる「全土征服」はくしくも中国共産党の成功物語と一致する。
アメリカはアフガニスタンの民主化よりも9・11同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディンの殺害に関心があったようで、ガニ政権は国民から支持されなかった。気が付けば、アフガン全土にケシの花が咲き乱れ、カブール以外の経済的命脈は全てタリバンに握られるようになっていた。
タリバンは中国共産党の子分ではない。両者の思想的・哲学的類似性が相互の接近を促している。中国はその類似性を存分に利用して対米戦略を構築するだろう。
この筆者のコラム
ウクライナ戦争は欧米と日本の「反ロ親中」思想が招いた 2022.03.16
「人権侵害は痛くもかゆくもない」日本の根底にある少数民族軽視とアジア蔑視 2022.02.08
運営停止に追い込まれた香港民主派メディアが筆者に語ったこと 2022.01.15
台湾有事勃発のシナリオ――中ロはこうして日本を「沈没」させる 2021.12.11
ウイグル、チベット、内モンゴル......中国による民族弾圧の原点は毛沢東にあり 2021.11.30
中央アジアとアフガニスタンが「中国の墓場」になる日 2021.10.16
タリバンと中国共産党が急接近する必然の理由 2021.09.21