コラム

タリバンと中国共産党が急接近する必然の理由

2021年09月21日(火)15時30分

第3に、どちらも農村から都市を包囲するという戦略で政権を獲得した。ソ連とコミンテルンの援助で生まれた中国共産党は当初、上海や広州など都市部での革命活動に重点を置いていた。

その後、熾烈な内部闘争を経てソ連の影響はそがれ、「山奥から誕生した共産主義」が主流となった。毛沢東派である。彼らは農村部を革命根拠地にし、都市を孤立させて全国制覇を実現した。毛の革命路線はアラブ各国を含む全世界に輸出され、無数の信者が実践した。

タリバン指導者がアラビア語版の毛語録を熟読していたかどうは分からないが、彼らの2度にわたる「全土征服」はくしくも中国共産党の成功物語と一致する。

アメリカはアフガニスタンの民主化よりも9・11同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディンの殺害に関心があったようで、ガニ政権は国民から支持されなかった。気が付けば、アフガン全土にケシの花が咲き乱れ、カブール以外の経済的命脈は全てタリバンに握られるようになっていた。

タリバンは中国共産党の子分ではない。両者の思想的・哲学的類似性が相互の接近を促している。中国はその類似性を存分に利用して対米戦略を構築するだろう。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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