
最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
変わりゆくキャリア? 「信頼」と「誠実さ」が選ばれる時代へ ー 米国ポートランドが示す『ニューカラー・キャリア』
いま、評価の基準が変わってきている? ニューカラー・キャリアに見る『信頼で選ばれる人の3つの条件』!
そんな 人と人とのつながりを軸とした働き方の延長線上にあるのが、近年、特に米国で注目されているニューカラー・キャリアという新しい人材観です。
これは、大学での学位よりも、現場で培ったスキルや、信頼に基づく仕事ぶりを重視するという価値観。
いま、採用や昇進の基準が、徐々に書き換えられつつあります。
ブルーカラーのような肉体労働でも、ホワイトカラーのように学歴を前提とするオフィスワークでもない。その間に生まれた職種群こそが、ニューカラー・キャリアと呼ばれる新しい選択肢。
ここで評価されるのは、実務を通じて磨かれた経験や、現場で活きる実践的な力です。
実際、アメリカでは先進的な企業を中心に、「4年制大学卒必須」を採用条件から外すという動きが広がりつつあります。
最近の日本の大手コンサルタント会社による調査でも、実務経験やスキルが十分にあるにもかかわらず、学位がないという理由だけで面接の機会すら得られないケースが多いと報告されています。
その結果、優秀な人材が見過ごされてしまう現状に対し、企業の人事担当者や採用の専門家からも懸念の声が上がっています。
今、採用の常識は静かに変わり始めており、その流れは確実に広がりを見せつつあります。
ではなぜ、ニューカラー・キャリアが注目されているのでしょうか。
そこには、AIや自動化の急速な進展。さらには、先進国での人手不足が深刻化するなか、日本でも同様に現場で信頼される人材がこれまで以上に求められているからです。
こうした働き方が広がっている背景には、いくつかの共通する傾向が見えてきます。
個人的な観察と分析を通して見えてきた、特に印象的な3つの視点を少しご紹介しましょう。

ニューカラー・キャリアに学ぶ、
『これからの人』 3つのポイント!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━① 学歴より 誰をどう支えたかで評価される文化
肩書きではなく、日々の行動と貢献で信頼を築いた人が選ばれる時代へ。
支える力こそ、職場に活力を生み出す「これからの強み」となります。② 現場で課題を解決し、人と調和する対応力
トラブルや人間関係に柔軟に、冷静に向き合える力。
マニュアルでは学べない「実践知」が、今もっとも求められています。③ 成果や工夫を記録して伝える力
自分の工夫や行動を「見えるかたちで共有できる力」もまた重要。
信頼を育てるのは、こうした積み重ねです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

積み重ねてきた生き方が、時代の先に重なっていく ー 働き方の新しい価値と『選ばれる人』の思考
チームと現場をつなぐリベカさんの姿は、働く親としても多くの示唆があります。
仕事と子育てを両立してきた、シングルマザーでもあるリベカさんの歩みに共感せずにはいられません。
「この仕事は、娘にとって本当に良いものだろうか?そんな視点をいつも軸にして選び続けてきたのです。収入の額だけでなく、福利厚生の内容、勤務時間が育児と両立できるかどうか。そうした条件を毎回、ひとつひとつ丁寧に見極めてきました。」
ちなみに日本では、シングルマザー世帯の約56%が相対的貧困状態にあるというデータがあります。
雇用されていることは、もはや生活の安定を保証しない時代。当たり前だったはずの安心さえも、少しずつ遠ざかっていく社会。
私たちは、そのただ中で日々を送りながら。あらためて立ち止まり、静かに問い直すタイミングに差しかかっているのかもしれません。
そんな時代にあって、「目の前にある小さな選択を、吟味する習慣をつけて、その小さなものを誠実に重ねていく。」
そんなリベカさんの歩みには、私たちがこれからを考える上での、大切なヒントが込められているように思います。
母として、働く女性としてのリベカさんの歩みを支えてきた価値観をこのように締めくくってくれました。
「キャリアも子育ても、一足飛びには進めません。大切なのは、忍耐と粘り強さ。
それを地道に積み重ねていけば、必ず最適なタイミングで最適なチャンスがやってきます。そして、やってきたそのチャンスを逃さず、勇気をもって受け入れること。それが未来をひらく鍵になります。
私自身の歩みを通して。また、まわりの人たちを見ていても、これは確信をもって言えることです。」
これが、これからの時代にこそ求められる、古くて新しい『働き方の原点』なのかもしれません。
| 次号予告日本人の有名美容師を父に持ち、メキシコで育ち、いまポートランドで建築実務に携わる一人の設計者。
今、この町で始まった新たなまちづくりのプロジェクト。現場の声にを丁寧にすくい上げ現実にしていく ー「誰の声をまちに反映させるのか?」
かつてこの町では、住民の声を置き去りにした行政主導の都市開発が地域と市民に深い傷痕を残しました。その結果、ポートランド開発局そのものが姿を消すに至った過去があります。
異なる文化を横断してきた一人の日系人の視点と実践力が、ポートランドのまちづくりにどんな風を吹き込むのか。
2025年7月中旬 掲載予定。どうぞご期待ください。

- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)