コラム

アメリカで黒人の子供たちがたたき込まれる警官への接し方

2017年11月15日(水)11時15分

この小説を読むと、アメリカの黒人たちが生まれたときから毎日のように与えられる「憎しみ」が肌感覚として理解できる。

以前のコラムにも書いたが、アメリカでは、カリルのように武器を持っていないにもかかわらず警官に殺される黒人が後を絶たない。だから、大人たちは、スターの両親のように子どもに「警官との接し方」を教えなければならないのだ。

この小説が描いているのは、白人による黒人差別だけではない。黒人街で、黒人が黒人を犠牲にするストリート・ギャング問題も描いている。

とても暗いテーマだが、しかし白人やアメリカ社会への怒りだけを描いた本ではない。何があってもスターの味方をする白人ボーイフレンドのクリスのキャラクターも含め、このYAは最後には希望を感じさせてくれる。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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