コラム

日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない

2025年04月25日(金)16時55分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

ジョージアでは人と人の距離が近い。私にとっては、その温かさがとても心地よく感じるため、日本人ももっと心の内を互いに明かし合ったほうがいいのではないかと、日本の人間関係の淡泊さを少々物足りなく感じることもあった。

しかしジョージアとヨーロッパ諸国育ちの妻に言わせれば、その緊密さがかえって心の負担につながっているというのだ。


日本の公共交通では、車内で通話することを控えるようにというアナウンスが流れている。海外のように電車の中で電話をするくらいよいではないかと思うこともあるのだが、それも妻から言わせれば、「素晴らしい」とのこと。

ジョージアで電車やバスに乗っていると、隣に座っている人の家庭内の様子がすべて筒抜けで、いやが応でもプライベートな問題を聞かされる羽目になる。その点、日本は電車も街もとても静かだというのだ。

私が心地よいものは、妻にとっては煩わしい。逆に私が物足りないと思っていたことは、妻にとっては過分だったのだ。「隣の芝生は青い」がまさに夫婦間で、双方向的に成り立っていたということである。

しかし、確かに来日したジョージア人の誰もが「日本は街が平静だ」と口をそろえて言う。では、その街の平静さを保っているものは何か? それは人ではないだろうか。

東京の街を歩いていると「ジョージア大使ですよね。写真を撮ってもよいですか?」とよく声をかけられる。私はこのことを本当にうれしく思っており、いつでも大歓迎している。

しかし、中には「今日はプライベートのようなので、ご迷惑かもしれないと思い、お声がけしようか迷ったのですが......」と遠慮がちに説明される方も少なくない。

外国人観光客が日本に心地よさを感じるのは、こういった配慮のある、この距離感と洗練されたマナーなのだと思う。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ビジネス

ANA、国内線65便欠航で約9400人に影響 エア

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story