コラム

日本の就職活動は不自由すぎる!「早く内定を」の重圧から学生を救え

2021年10月22日(金)12時25分
西村カリン
就職活動

TAGSTOCK1-iStock

<就活のスケジュールやルールを経団連や政府に決められた方が安心という声もあるが、それと引き換えに学生に過度なストレスがかかるリスクもある>

「就活」「就職内定」「内々定」「就職内定率」。私は初めてこういった表現を聞いた時、すぐには意味が分からなかった。理由は簡単。母国であるフランスでは、同じような就職活動の流れがないからだ。

もちろんフランスでも大学生はいつか勤め先を探すけれど、日本とは違うプロセスでもっと自由に就活する。企業も自社の都合に合わせて、必要なときに1人ずつ採用する。それで不安を感じる学生もいるが、自分のペースでできると思う学生は多い。文化の違いだが、日本ではルールがあり過ぎるのではないかと思う。スケジュールも「3月に説明会解禁」「6月に採用面接などの選考解禁」というように、全てが細かく決まっているようだ。

最近まで、代表的な就活スケジュールは経団連から発表されていた。なぜなのかと、違和感を覚える日本人もいる。2018年に経団連の中西宏明会長(当時)は記者会見で、21年春入社分からのスケジュールやルールを廃止する考えを示した。本人自身がこういったルールは時代錯誤だと思っていたから、その提案をしたのだろう。

「学生のことなど全てを経団連が采配しているわけではない。それなのに、いいの悪いのと批判を浴びる。終身雇用など基本的なところが成り立たなくなっている。一斉にやることもおかしな話だ」と、彼は説明した。

若いうちにリスクを取らないでいつ取る?

とても良い判断ではないかと私は思ったが、驚いたことに、世の中に大きな混乱を招くという指摘がされた。そうしたスケジュールに従わない採用活動を行う企業は増加傾向にあるけれども、学生たちはなぜか決まったスケジュールがあるほうが安心するようだ。

従ってプロセスにはあまり変更がなく、経団連の代わりに政府が就活ルールを決定するようになった。新型コロナウイルスのパンデミックで採用活動を延期した企業は多いが、考え方やアプローチは同じだ。日本の若者が「安定した形」を求めることにもいつも驚かされる。若いうちにリスクを取らなければいつ取るのかと私は思うが、やはり日本の社会ではリスクを取る者は高く評価されないから、彼らは決まった道を歩くことを選びがちだ。

良い点は、フランスに比べて日本での就職率が非常に高いこと。フランスでは新卒一括採用のシステムがないので、卒業してから本格的に就活をする若者が多い。例えば19年に卒業した大学生の場合、一般的な基準とされる1年後の就職率は69%にすぎない。新型コロナウイルスの影響で前年に比べて16ポイント下がった。しかも69%の人々のうち、半分近くは非正規だ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡りトランプ氏との会談求める

ワールド

タイ・カンボジア両軍、停戦へ向け協議開始 27日に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story