コラム

外国人には分かりにくい、日本の「平和主義」ってなに?

2020年04月11日(土)17時40分
李 娜兀(リ・ナオル)

一方でそうなると、ますます日本で言われる「平和主義」とはなんだろう、ということになるのだが、それでも「平和主義」は支持されている。18年5月の朝日新聞の世論調査によると「憲法が掲げる平和主義」についての問いに「今後も変わらず持ち続けるべきだ」との回答が67%だった。

こうした世論は、今も日本の防衛政策の一種の「縛り」としては作用しているようだ。自衛隊の海外派遣は引き続き抑制的だし、防衛装備移転三原則となって6年もたつが、本格的な武器輸出は実現していない。昨年11月に千葉県で開かれた日本で初めての防衛装備展示会「DSEIジャパン」を見学したが(写真)、日本企業が出品しているのは、災害対応の機器や偵察用の無人機など、それほど「攻撃的」ではないものが多く、韓国で開かれる同種の展示会とは雰囲気が違った。

だから、細かいところに目を向けると、今も日本で「平和主義」がふんわりと生きていることはなんとなく分かる。でも、外国人にはとても分かりにくい。日本の防衛政策がなぜ、何を抑制しているのか。そして、それが国際的な平和、例えば軍縮や地域対立の緩和にどのように役立つのか。もっと分かりやすく示されてほしい、と考えている。

magTokyoEye_Lee.jpg李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。

<本誌2020年3月24日号掲載>

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2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?

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