1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」が若返りにも効くらしい
Vera Prokhorova -shutterstock-
<厳しい夏を越えたこの時期、体がだるい、眠い、やる気が出ない――そんな「秋バテ」を感じていないだろうか。 実はその不調をやわらげるサプリより効率的な飲み物がある>
若さを保つ秘訣はあるか。「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さんは「究極の若返りが叶うと注目されている成分がある。サプリも販売されているが、実はスーパーで簡単に手に入れることができる」という。ライターの笹間聖子さんが聞いた――。
夏の疲れが蓄積した「秋バテ」にはこの一杯
やっと涼しくなってきた昨今だが、体のだるさや疲れやすさ、「1日中眠い」などの不調を感じていないだろうか。それ、「秋バテ」かもしれない。秋は気温差が大きく、その変化に身体が順応しにくいため、自律神経が乱れがちになる。
「特に今年は夏の暑さが厳しく、疲労が蓄積している人が多いんです。そこに急激な気温低下が重なって、免疫力も下がりやすい。体調を崩しやすくなるのは当たり前です」
そう教えてくれるのは、発酵食品の正しい知識や楽しみ方を普及している「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子先生だ。発酵への知見が深く、辛口なユーモアを交えて軽やかに話す「発酵の伝道師」としても知られている。

秋の不調には、夏に冷たいものを摂りすぎたことによる「内臓冷え」も影響しているという。内臓が冷えると、下痢や便秘、食欲不振だけでなく、集中力低下や慢性疲労につながりやすいのだ。
この「秋バテ」の今こそ藤本先生が勧めるのが、「米麹」を発酵させてつくる「麹甘酒」だ。ちなみに、甘酒は「酒」とつくもののノンアルコール飲料である。サラリとした喉越しだが米の粒々が入っていて、果実のジュースくらい甘い。江戸時代、酒屋が作った甘い飲み物だから、「甘酒」と呼ばれるようになったそうだ。
江戸時代は「エナジードリンク」「砂糖代わり」だった
「麹甘酒は江戸時代から『夏の滋養』として用いられてきましたが、私は「秋バテ」の今こそ飲むべきだと思いますね」と藤本先生は続ける。
あれ? 甘酒って冬に温めて飲むものでは?
そう思った人もいるかもしれない。しかし麹甘酒は江戸時代、おもに夏に売られていた。酒蔵が酒造りに忙しい秋~春を避け、閑散期の夏、酒造りに使用する米麹をそのまま使って造っていたからだ。

江戸の町には、「甘酒〜い」と声を張り上げる行商人がいたそうだ。値段は一杯4〜8文、現代の100〜250円ほど。常温で茶碗に注がれ、庶民の間で「エナジードリンク」として親しまれていたという。
「麹甘酒に含まれるブドウ糖は砂糖よりも脳のエネルギー源になりやすく、疲れを解消し、集中力の低下を防いでくれます。ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、葉酸などの『ビタミンB群』も豊富で、炭水化物やタンパク質、脂質を効率的にエネルギーに変換する力が強い。だから体温が上がり、元気が湧いてくるんです」
実際、複数の麹甘酒を製造する酒造メーカーの臨床実験で、心身の疲労感、無気力感の改善などの結果が報告されている。加えて、便通改善や大腸炎予防、関節痛緩和、中性脂肪の低下などの研究結果も......。
さらには、食後の血糖値及びインスリン量の上昇を抑制する成分が含まれることも分かっている。マルチに効く「パーフェクトドリンク」なのだ。
また、江戸時代は砂糖が貴重だったため、麹甘酒は「甘味」としても楽しまれていた。レシピが簡単な「麹甘酒づくり」は一般家庭にも広がり、明治、大正、昭和初期までは、各家庭で仕込み、料理や菓子づくりにも使われていたという。
しかし、第二次世界大戦で状況が激変する。米不足となり、米麹が作れなくなったからだ。追い打ちをかけるように、大戦後はアメリカからコーラやオレンジジュースが流入。甘味としての役割もなくなり、麹甘酒は日本人の記憶から消えていった。





