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1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」が若返りにも効くらしい

2025年10月24日(金)10時34分
笹間 聖子(フリーライター、編集者)*PRESIDENT Onlineからの転載

登場した「甘くない甘酒」

すると、入れ替わるように「酒粕甘酒」が台頭する。

酒粕に水と砂糖を合わせてつくる甘酒だ。1970年代の高度経済成長期、よく働き、よく酒を飲む「モーレツサラリーマン」が登場し、日本酒消費量が急増したことが要因である。

その副産物として大量の酒粕が生まれ、神社に奉納されるように。この酒粕から神社は「酒粕甘酒」を作り、参拝者に温めた酒粕甘酒を振るまうようになった。


筆者も子供時代、神社で「酒粕甘酒」を飲んだ経験がある。そして、「甘酒=まずい」というイメージを抱いていた。酒の風味が強く、子供にとっては到底おいしいと思えるものではなかったからだ。そこから長い間、「甘い甘酒」の存在を知らなかった。

「酒粕甘酒は揮発が不十分だとアルコールが残っていることもあるので、子どもには向きませんね。私も子どもの頃は 甘酒ってまずい と思っていました(笑)」

ちなみに、酒粕甘酒も古くから日本にあったそうだが、麹甘酒とどちらが先だったかは分かっていない。「甘酒」が最初に登場する記録は、奈良時代、720年に書かれた最古の歴史書『日本書紀』である。同書の中に、「289年頃、吉野の民である国栖人くずびとが、応神天皇に醴酒を捧げて国栖奏を奏で、酒宴を行った」と記載がある。

この「醴酒」が甘酒の先祖だ。しかし、それが麹甘酒と酒粕甘酒、どちらだったかが分からないのだ。とにかく、その頃天皇に「甘酒」が献上されていたことは間違いない。

ビタミンCよりも強い抗酸化成分が含まれている

再び麹甘酒にスポットが当たったのは2011年頃。塩麹ブームをきっかけに「麹が体にいい」という認識が広まり、麹甘酒が再評価されたのだ。

「2012年から甘酒市場はどんどん伸びはじめ、食品新聞の推定によると、2015年に95億円だった市場が、2017年には215億円に。2年で2倍以上に成長しました」

急成長の要因は科学的裏付けだ。

ブドウ糖やビタミンB群、必須アミノ酸、食物繊維、オリゴ糖など、350種類以上の栄養素が解明され、「飲む点滴」と呼ばれるようになった。麹甘酒の健康効果が「飲む点滴」として注目され、ブームが到来したのである。

さらに2016年には、「エルゴチオネイン」という強力な抗酸化成分が一部の麹甘酒に含まれることも判明した。エルゴチオネインは、ビタミンCやEよりも強い抗酸化作用を持っている。肌の酸化を防ぎ、シワやたるみの予防に寄与する"究極の若返り成分"として注目されている成分だ。

「アメリカではきのこ類から抽出してサプリにし、アルツハイマー患者の治療に使う研究も進んでいます。脳の認知機能改善や抗うつ機能も期待されています」

その1年後、2017年の研究では、麹甘酒に含まれる「麹由来グルコシルセラミド」という成分に、肌の潤いを助ける機能があることも解明された。甘酒摂取により、目の下のクマが明るくなり、髪のツヤが改善したというデータもある。

この頃から麹甘酒は、女優やモデルなど、美と健康に敏感な層からも支持を集めるようになった。藤本先生によると、「ゴルフの途中で甘酒を飲んでいるマダムも多かった」そうだ。

疲労回復、代謝アップ、体温調節、整腸、美肌、美髪――まさに現代人が求める効果のオンパレードだ。「まあ、究極のアンチエイジングですよね」という藤本先生の軽快な語りを聞いていると、"古い飲み物"という印象は微塵もない。

今、甘酒は海外でも認知度が急上昇しており、アメリカ、フランス、タイなどのスーパーや日本食レストランで、健康志向の高い層に人気を博している。オーガニック食品と同じコーナーに置かれることも多いという。

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