最新記事

宗教2世

「病院に行かせてくれない」「祈れば治ると言われる」──宗教2世が体験した医療ネグレクトの数々

2022年12月9日(金)11時50分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)


●女は身体的に強いと前置きをされ、医療的なネグレクトを正当化。入管問題によくあるような、「仮病扱い」なども受けた。その結果、病気の発見が遅れて重病化したり、死にかけたりした。それらを精神論で片付けようとする様が、醜悪だった。

●病院になるべく行かない、薬をなるべく使わないという教えがあるので、実家にいる間は殆ど病院に行かなかった。生理痛が辛い時に、痛み止め薬を隠れてしか飲めないのが辛かった。実家を離れてからは普通に婦人科に通院しているが、親には言っていない。

●薬は毒なので、薬はもちろんワクチンは接種してはいけない。漢方も摂取してはならない。

こうした書き込みは、氷山の一角に過ぎない。反ワクチン運動などの医療カルトも含め、「現代医療を否定する」「代替医療・民間療法を推奨する」という団体は少なくない。宗教法人においては、「信心を持つこと」自体が、代替医療として推奨されることもある。

病気を持つ当事者が、不安や恐怖などから、藁にもすがる思いで代替医療に接続をするのはよくあることだろう。だが、2世問題においては少しフェーズが異なる。親や家族が、子供に対して医療行為を拒否することにより、健康を損なわせてしまうのである。

虐待防止法では、家庭内での虐待に焦点が当たりがちだ。だが今後は、団体による「虐待推奨行為」を視野に入れ、医療ネグレクトについての対処も検討される必要がある。

怪我、病気、障害は「ペナルティ」

「病院に行かせない」といった医療ネグレクトとまではいかなくとも、「医療的効能」を強調するような宗教や信者集団は少なくない。「信心によって治る」といった、楽観的な声がけもあれば、「信心がないせいで病気になる」といった、脅迫的な声がけもある。


●お浄め(おきよめ)をすると病気が治る。アトピーや癌など、さまざまな病気が治った人が周りにたくさんいる(と言われた)。

●「信心したら〇〇さんの病気がよくなったから、あなたもしっかり信心しなさい」と言われた。

●小学校高学年で、病気や怪我をした時に、心配もされず、「日頃の行いが悪いから、神様が教えてくれているんだ」と言われた。

●幼児期に当時不治の大病にかかり治療法もなく医師に死ぬと言われたが助かり、それは祖父母や両親の信心のお陰、お前も信心しないとまた病気になって死ぬかもしれないと言われた。

●あの人は信心が足りないから事故にあった、病気になった、不幸になった等、脅すような物言いをよくされたが、入信すらしていない大勢の人達はどうなるのかと疑問を持っていた。

●自分が怪我や病気をした時に、日頃の「ほこり(欲張りな心などのこと)」を神様が怪我(病気)として教えてくださった。日頃の行いを改めなさいと言われた。怪我や病気に対する心配はしてもらえず、責められた。

●良いこと良い結果は「神様のおかげだね」、怪我や特に病気は「心づかいがよくないからバチがあたったんだ」と自分自身が悪いと言われる。怪我や病気をしても心配されるどころかそうやって怒られていたので、他人が怪我や病気をしても同じように思ってしまい、他人を心配するという心が欠落している自覚があります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 5
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中