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ロシアが核を使えば、アメリカも核を使う──ロシアを止めるにはそれしかない

TIME FOR A BLUNT HAMMER

2022年10月13日(木)17時05分
ウィリアム・アーキン(元米陸軍情報分析官)

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テレビ演説でウクライナ東・南部4州の「併合」を宣言したプーチン大統領 REUTERS

前ロ大統領で「プーチン後継」の本命と目されるドミトリー・メドベージェフも、ロシアの自衛手段には「戦略核兵器」が含まれると述べ、ウクライナだけでなくアメリカ本土への攻撃を示唆している。

「米情報部は、ウクライナ領への核攻撃はないとみている」と指摘したのは元パイロットの武官だ。「(ロシアが言いたいのは)戦局の打開に戦術核を使うといった話ではない。これはアメリカと、そしてNATOに対するメッセージであり、要するにロシアの領土を攻撃するな、プーチンを脅すなということだ」

ちなみに米国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバンは9月25日にアメリカの三大ネットワークに次々と出演し、ロシアによる核の威嚇に対する政権の対応を明らかにした。まずABCニュースでは、「ウクライナで核兵器を使えば壊滅的な結果を招くぞと、極めて高いレベルでロシア側に直接、内々に伝えてある」と語った。

「断固として対応する」の具体的な内容

またNBCの報道番組『ミート・ザ・プレス』では、「ロシアがこの一線を越えたらアメリカは断固として対応する」と述べた。そしてバイデン政権はロシア側とのやりとりの中で「これが何を意味するのか、より詳細に説明している」とした。

その「断固として」が何を意味するのかは明かされていない。しかし2人の軍人は本誌に、原子力潜水艦や航空機の移動、B52爆撃機の訓練など、核の脅威に対応する微妙な動きがあると明かした。ただし、あくまでも本筋は核以外の軍事オプションだと言う。つまり通常兵器での対応や特殊部隊の投入、サイバー攻撃や宇宙戦などであり、プーチン暗殺のシナリオも含まれる。

バイデン大統領は核以外のオプションでプーチンを抑止できると考えているのか、またこの点で政権と軍のコンセンサスはあるのか。本誌はこの点をホワイトハウスに問いただしたが、具体的な回答はなく、「わが国のロシアに対するメッセージについては、ジェイク・サリバン補佐官が9月25日に語ったとおりだ」との返事のみだった。

2月にウクライナ侵攻が始まって以来、アメリカの情報機関は最優先で、ロシアに核兵器使用の動きがあるかどうかを見守ってきた。そして大統領を含む国家安全保障チームは、プーチンが核のボタンを押した場合の対応を検討してきた。

「何カ月もかけてさまざまなシナリオを想定してきた」と、前出の核戦略計画官は言う。そのシナリオには欧州西部方面への核攻撃から、高高度で核爆発を起こして電力網を完全に崩壊させる電磁パルス(EMP)攻撃までが含まれる。

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