最新記事

熱波

熱波のバンクーバー、浜辺でムール貝が焼き上がる

2021年7月13日(火)17時45分
青葉やまと

熱波で10億の磯の生物が焼け死んだ模様...... YouTube

<海岸の岩は50℃に達し、天然のバーベキュー場となった>

記録的な熱波に見舞われたカナダのブリティッシュ・コロンビア州(以下「B.C.州」)で、またしても異常な現象が報告された。6月末から7月初めにかけての高気温で海水の温度が上昇し、浜辺の貝が半ば加熱調理されたような状態となって大量に死んでいたことがわかった。

この問題を調査しているブリティッシュ・コロンビア大学のクリス・ハーレー海洋生態学教授は、バンクーバーが位置するセイリッシュ海沿岸において、6月末だけで10億匹以上の浜辺の生物が死んだ可能性があるとみている。

ムール貝のほか、フジツボやヤドカリ、ヒトデなどに被害が及んでいる。海岸の北側の領域では大量のフジツボを中心とした死亡例が報告されており、反対に米国境に近い南側の沿岸では、アサリを中心に熱波と高温で干からびた例が顕著だ。

カナダのナショナル・オブザーバー誌は「B.C.の熱波で10億の磯の生物が焼け死んだ模様」と報じた。米ワシントン・ポスト紙もこの問題について、「北西部とカナダ襲う過酷な熱波で無数の貝類が生きたまま料理される」と報じている。

B.C.州ではヒートドーム現象による被害が深刻で、同国の観測史上最高となる49.5℃の気温を記録したほか、一時は170件を超える森林火災が同時進行し、山間部のある町では9割が焼失する事態となった。

干潮で取り残され、高温に耐えられず

磯部で自然に調理された状態となったムール貝だが、残念ながら多くは腐敗が進行しており、とても食べられる状態ではないようだ。教授はナショナル・オブザーバー誌に対し、発見時はこれらの貝類などが「加熱されて死亡」しており、「その熱気と悪臭は衝撃的だった」と振り返る。

セイリッシュ海沿岸の気候はふだんならば穏やかだが、6月末には熱波の影響で気温が40℃ほどにまで上昇した。現在は沿岸の複数のビーチで、死んだ貝類などによる腐敗臭が充満しているという。もしも貝類が海中に留まることができていたなら、高気温と直射日光の影響は緩和されただろう。しかし、一部は浜辺に取り残されてしまい、こうした海洋生物のあいだで被害が広がった。

不運にも熱波が最も深刻だった日には、干潮で潮が引くタイミングと気温上昇の時間帯が重なった。ヒトデやムール貝などが砂利の目立つ浜辺や磯の岩場などに取り残され、およそ6時間にわたり高温にさらされたことになる。こうした貝類は透明感を失い、まるで火を通したかのように白変した状態となった。

今回の熱波が去ったあとも、生態系へのダメージは数年単位で尾を引く可能性がある。10億匹以上という大量の海洋生物がわずか数週間で失われたことになるが、個体数はすぐに回復するわけではない。ハーレー教授は、ムール貝やフジツボなどは比較的成長が早いものの、それでも回復に2〜3年を要すると見積もる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中