最新記事

米中サイバー戦争

米中新冷戦の主戦場はサイバー攻防戦

U.S., China's Cold War Is Raging in Cyberspace

2020年9月17日(木)17時45分
ナビード・ジャマリ、トム・オコナー

中国の当局者たちは、中国には諸外国から情報を盗むための壮大な陰謀があるという疑惑を繰り返し否定してきた。在米中国大使館は本誌に、「アメリカ側は、自分たちの主張を裏づける確固たる証拠を一切提示できていない」と語った。

「中国は革新大国、知的財産大国であり、科学的な革新や知的財産の保護を強化し続けてきた」と大使館は述べ、こう続けた。「今や中国は、革新のための研究開発の規模と成長率で世界をリードする国のひとつだ」

同大使館によれば、中国の研究開発費は2006年の約440億ドルから、2018年には3000億ドル近くにまで増えている。世界最大の人口を抱え、科学分野に重点を置いている中国は、世界で最も多くの研究者を擁しており、国内外で特許の出願を加速させている。

中国政府はまた、国内での知的財産保護を強化し、不正行為を取り締まるための複数の国際協定に参加しているとも主張している。

在米中国大使館は、中国における商標法の改正や知的財産の乱用を防ぐための新たなガイドラインの策定を引き合いに出して、こう主張した。「中国は近年、知的財産権保護のための政策を導入し、取り締まりも強化した。一連の取り組みは目覚ましい成果をあげている」

「中国市場のジレンマ」

その上で同大使館は、西側の複数の組織から好意的な評価を得ているとも述べた。たとえば世界銀行の報告書「ビジネス環境の現状2020」では、最もビジネス環境の改善がみられた上位10カ国・地域に中国が2年連続でランクインしており、米商工会議所は、オンライン通販と医薬品特許をはじめとする分野での、中国の知的財産保護策を称えているという。

だが世界銀行の「ビジネス環境の現状」報告書は、2020年版の発行後に、発行の一時停止が発表されている。2018年版と2020年版のデータに「異常」が報告されたためだという。

米商工会議所のスコット・ホール広報担当は、「中国は知的財産集約型のイノベーターやクリエイターにとってのジレンマだ」と述べ、こう説明した。

「一方では、中国市場はあまりに大規模で成長が速く、競争という点から無視することはできない事実がある」と彼は述べた。「だがもう一方では、中国市場で事業を展開している企業は基本的な知識として、特許や著作権、商標や企業秘密などが悪用されているという事実も受け入れなければならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

政府、25年度成長率の下方修正検討 1%未満の可能

ビジネス

日経平均は続伸、円高一服などで4カ月ぶり高値 3万

ワールド

イラン議会、IAEAとの協力停止法案承認=報道

ワールド

アングル:NATOの北の守り固めるフィンランド、一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 4
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 9
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 10
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中