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宇宙開発

トランプが宇宙開発を重視する理由......米代理大使、NASAアジア代表インタビュー

2020年9月15日(火)17時00分
澤田知洋(本誌記者)

米フロリダ州から「スペースX」開発の宇宙船「クルー・ドラゴン」が5月30日、打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)へドッキングに成功した Steve Nesius-REUTERS

<トランプの宇宙政策からデブリ問題、注目の日系宇宙ベンチャーから宇宙での軍拡競争まで、米代理大使とNASAアジア代表が最新の宇宙事情を明かす>

宇宙開発が世界で花盛りだ。特に今年の夏はアメリカ、中国、そして日本のH2Aロケットを利用したUAE(アラブ首長国連邦)が相次いで火星探査ロケットを打ち上げるなど、各国の宇宙に懸ける熱量が実感される季節となった。なかでもメディアの注目度が高かった宇宙関連ニュースといえば、5月に打ち上げられた米宇宙開発ベンチャーのスペースXの宇宙船「クルー・ドラゴン」が国際宇宙ステーション(ISS)への有人輸送を成功させた一件だろう。

アメリカがISSに有人宇宙船を打ち上げるのはスペースシャトル以来約9年ぶりで、しかも民間企業が実現させたのは世界初とあって、「宇宙大国」アメリカ復活の兆しを印象付けるものとなった。ではアメリカが現在、軍事目的や民間参入など様々な形で宇宙開発に力を注いでいる事情の背後には何があるのか。日本がそこに占める位置とはなにか。ジョセフ・ヤング駐日米臨時代理大使とNASA(米航空宇宙局)アジア代表部のガービー・マッキントッシュ代表へのインタビューから探った。

「まずは大統領が個人的に宇宙に情熱を抱いていること。そして宇宙で活発になっている民間企業の活動において、アメリカのビジネスの存在感を大きくすることを願っていること」。ヤング代理大使はドナルド・トランプ米大統領がなぜ就任以来、宇宙事業を重視してきた理由をそう語る。クルー・ドラゴンのミッション成功に結実した宇宙探査の民間参入拡大はオバマ前政権時代にはじまったものだが、トランプは5月のロケット発射をケネディ宇宙センターに駆け付けて見守っている。「アメリカが第一」かつ「アメリカが一着」の「アメリカ・ファースト」を宇宙分野で発信するための力の入れようは明らかだ。

またトランプ政権発足後にはブッシュ政権時代に打ち出され、オバマ時代には一旦中止となった月面と火星の有人探査を目指す計画の流れをくむ「アルテミス計画」が発表されているほか、国防面では宇宙軍も創設された。「アメリカのプレゼンスをあらゆる領域においてより強くしようとする大統領の取り組みの一環」だとヤング代理大使は説明しつつ、そのモチベーションの背後には将来に向けて大統領の「レガシー(功績)」作りもあるようだと冷静に指摘する。「アルテミス計画を数十年後に人々が振り返るとき、火星に到達したのはトランプ政権の功績だと思い出されることがレガシーとして重要なのだろう」。

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ジョセフ・ヤング米駐日臨時代理大使(左)とNASAアジア代表部のガービー・マッキントッシュ代表 U.S. Embassy in Japan

日本の技術力への期待

オバマ政権時代には有人月探査のための「コンステレーション計画」がコストの超過などにより中止された。NASAのマッキントッシュ代表は、その後トランプ政権になってから予算は毎年増加傾向にあり、政府のサポートは手厚くなっていると認める。「2017年にトランプ大統領が(アルテミス計画の元となった)宇宙政策指令第1号に署名してから、NASAとしては月を目指し、やがては火星を目指すという方向性が明確になった」。このNASAの当面の目標についてヤング代理大使は、「今後(地球表面から高度2000キロ以下の)低軌道の領域に関しては民間のサービスが増えていくと期待しており、その分余ったリソースを月や火星などの深宇宙の探査に向けていきたい」と政府の立場を述べる。

ではそのなかにあってアメリカは日本にどのような役割を期待しているのか。アメリカ政府は「日米同盟の一つの柱として宇宙協力を捉えている」とヤング代理大使は言う。「日本とは50年、宇宙協力をしてきた歴史がある。日本は優れた技術力があり、自由主義陣営では2番目の経済規模。宇宙探査を行う上では自然なパートナーだ」。

そしてそうした日米協力の最新の形はやはりアルテミス計画だ。元々カナダやEUなども含む国際プロジェクトとして進行しており、7月には文部科学省とNASAが日本人宇宙飛行士の月面着陸などを含む日本の役割について明記した共同宣言を発表している。そのなかで、月の周回軌道上に建設して火星探査への足がかりも担う宇宙ステーション「ゲートウェイ」の居住棟建設や物資補給などについては日本が担当する青写真が示された。

アルテミス計画に参加する可能性のある「尊敬されるべき」企業としてヤング代理大使が引き合いに出したのが、IHIや三菱重工、川崎重工などすでに長年の実績ある大企業。だが、それ以外の新興企業群にもアメリカ政府は注目しており、参加への期待感を示している。

「例えばアイスペースは月面用の小型ローバーを作っているほか、月面で使う計測器も手掛けている。アクセルスペースなどは小型衛星を手掛けており、アストロスケールはスペースデブリ(宇宙ゴミ)に対応している(※3社とも東京の宇宙系ベンチャー)」とすらすらと代理大使の口から名前が挙がる。固有の領域に強みを持つ日本企業に対してのアメリカ側の期待の大きさが垣間見える。

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