最新記事

空気感染

やはり空気感染はあった? だとすれば対策の強化が必要

Is Coronavirus Airborne? The Debate Between Scientists and WHO Explained

2020年7月8日(水)17時35分
カシュミラ・ガンダー

では、そもそも空気感染とは何か。ややこしい話だが、この文脈で使われる「空気感染」は、麻疹や結核のような、ウイルスが容易に長距離を移動して拡散するほかの疾患の場合と同じ意味ではない。イングランドにある英レディング大学のウイルス学教授で、今回の公開書簡には加わっていないイアン・ジョーンズは本誌に対し、新型コロナウイルスは「本来の意味で空気感染するわけではない」と話した。

同じく公開書簡の署名者ではない英エジンバラ大学の感染症教授ホセ・バスケス=ボランドは、意見書のなかで、この議論はつきつめれば、ふたつの事象の間の違いに行き着くと述べている。

一つ目は、感染者が咳やくしゃみをしたときに呼吸器から出る飛沫による感染だ。この飛沫は比較的重いため、それほど遠くまでは移動せずに落下する。WHOなどの公的機関は、これが新型コロナウイルス拡散の主要経路と見ている。2つ目は、いわゆる「空気感染」。これは、飛沫より小さい粒子(エアロゾル)が空気中を漂うケースで、より長距離を長時間にわたって浮遊し、人が吸い込む可能性もある。

「一般の人たちにとっては、区別は難しいかもしれない」と、バスケス=ボランドは言う。

ミネソタ大学感染症研究政策センターの研究コンサルタントであるリサ・ブロソーが電子メールで本誌に説明したところによれば、WHOは従来、新型コロナウイルスでは空気感染はなく、飛沫が顔や粘膜に付着することによる飛沫感染しかないと主張してきた。

だがレスター大学のタンによれば、WHOが用いている定義は、直径5ミクロン未満の粒子による感染を空気感染、それよりも大きな飛沫による感染を飛沫感染とする時代遅れのものだという。

2メートルでは足りない

「(署名者たちは)いらだちを感じているのだと思う」と、ブロソーは言う。「感染経路は飛沫感染だけではいのに、あまりにも多くの医療従事者や労働者、そして一般市民が、感染経路は飛沫感染のみで、マスクで顔を覆うのはそうした飛沫が飛ぶのを阻止するためだと信じているからだ。私も同じいらだちを感じる。こうした誤解は、人命を守る妨げになる」

ブロソーはさらに続ける。「われわれは、換気の改善、屋内にいる人数の制限、相互にとる距離のさらなる拡大、人と人が接触する時間の短縮に、焦点を当てる必要がある」

新型コロナウイルスの拡散を防ぐには約2メートルの距離を置くべきだという定説について、ブロソーは次のように述べている。「2メートルは、確かな科学的根拠に基づく数字ではない。きわめて古いデータに基づく経験則だ。咳やくしゃみは、2メートルをはるかに超えて飛散する。小さな粒子も同じで、空気の流れに乗っている場合はなおさらだ」

(翻訳:栗原紀子、ガリレオ)

イタリアを感染拡大の「震源地」にした懲りない個人主義
「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開

20200714issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、イラン指導者殺害や体制転換の扇動「容認で

ワールド

OPECプラス8カ国、4月に増産開始で合意 イラン

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

プーチン氏、ハメネイ師殺害は道徳規範と国際法に違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 3
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 4
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 8
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 9
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中