最新記事

教育

教師がキャリア教育まで担当する、日本の学校は世界でも特殊

2020年7月1日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

上述のように、答えは教員だ。同じ資料に、教員がキャリアガイダンスの責任を持つ学校に通っている生徒の率も出ている。この指標を、キャリアカウンセラーがいる学校の生徒の率と絡めると、驚くべき傾向が明らかになる。

data200701-chart02.jpg

日本では、ほぼ全ての学校で教員がキャリアガイダンスをしており、専門のカウンセラーがいる学校はわずかだ。右下は教員、左上は専門人材がガイダンスを行う国と読めるが、日本は前者の極地であることが分かる。

日本の経営慣行に詳しい外国の論者は、「日本人はやはりマルチタスクだ」という感想を抱くだろう。仕事の境界(範囲)が不明確で、専門性に基づく分業がない。教員は何でも丸抱えで勤務時間が世界一になるのは道理だと。

日本の教員は真面目で優秀だが、キャリアガイダンスの担い手として適任かどうかは別問題だ。本来業務の片手間にできる仕事ではなく、それなりの専門性も求められる。机上の知識・理論だけでなく、民間会社に勤めた経験もモノを言うが、日本の教員の民間企業出身者比率はほぼゼロだ。学校しか知らない人に、産業界のことを実際の経験から醸し出される「ぬくもり」をもって生徒に伝えることができるか。そんな疑問もわく。

経験に勝るものはなしということで、学習指導要領では、キャリア教育に際して現場での実習を行うことが推奨されている。だが生徒を外に送り出すだけではなく、学校内に外部の専門人材を呼び寄せることも必要になる。

年に数回の講話という形式的なものではなく、生徒とひざを突き合わせて、世の中にはどういう仕事があるか、産業界の実情はどういうものかを語り、生徒の進路選択を支援できる専門スタッフを、学校に迎え入れることはできないものか。副業(パラレルキャリア)が推奨されている今、なり手はいるはずだ。教員の過重労働緩和にもなる。

テストの点数を見て、「どの学校に行くか」を指南する進学指導はもう終わりだ。将来何になりたいか、社会とどう関わりたいかを考えさせる、キャリアガイダンスが求められるのであって、それには専門人材の力を借りることが不可欠だ。

心理相談にのるスクールカウンセラーが常駐する学校が多くなっているが、将来への手引をするキャリアカウンセラーも学校に常駐して欲しいと思う。

<資料:OECD「PISA 2018 Results WHERE ALL STUDENTS CAN SUCCEED VOLUME II」

【話題の記事】
・BLMの指導者「アメリカが我々の要求に応じないなら現在のシステムを焼き払う」の衝撃
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・「ベートーベン黒人説」の真偽より大事なこと
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米地裁、FRB議長の召喚状差し止めの判断維持 検察

ワールド

イラン上空で米戦闘機撃墜、乗員1人を救助 対イラン

ビジネス

米3月雇用者数17.8万人増、過去15カ月で最多 

ワールド

米政権、「脱獄不能」アルカトラズ監獄再開へ予算 ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 8
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 9
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 10
    『ナイト・エージェント』主演ガブリエル・バッソが…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中