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自粛警察、梨泰院クラブ、セレブのSTAY HOME 新型コロナが暴く日米韓の国民性

2020年5月9日(土)21時14分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

セレブの発言に嫌悪感覚えるアメリカ国民

自由の国アメリカでは、今まで着用してこなかったマスクをし、握手やハグをやめるなど、国民が団結している一方で、政府に向けてロックダウン解除を求めるデモなども各地で発生している。

個人の行動の自由を尊重する国民性からか、自粛警察のような行為は目立ってはないが、反対にセレブたちのSTAY HOMEの呼びかけに嫌悪感をもつと言う人が増え始めている。

「セレブたちが自宅の豪邸を背景にSTAY HOMEの呼びかけをしても、まったく響かないし共感できない」という投稿が目立つようになった。外出禁止令が出て2カ月が過ぎ、不満と経済的不安が溜まっている中で、何かに当たりたい気持ちの表れなのかもしれない。

アメリカと言えば、英雄信仰の強い国民性を持っている。今回のパンデミックでは、世界中で医療従事者はヒーローであるという賞賛の声が集まっているが、それと同時に、生活に必要不可欠な仕事に携わるエッセンシャル・ワーカー達への感謝の気持ちも生まれ、これまで当たり前と思っていた生活が多くの人たちに支えられていたことを改めて気付かされた。

エッセンシャル・ワーカーからの冷や水

これに対し、あるスーパーの店員の記事が話題を呼んでいる。「Calling Me a Hero Only Makes You Feel Better」(私のことをヒーローだと呼んで、いい気分に浸っているのはあなただけ)というタイトルのこの激白記事によると、店員は「私は自らの命を危険にさらすかもしれない仕事に就いた覚えはない」と語っている。

「今も毎日仕事へ来るのは、使命感などではなく、他にお金を稼ぐことができないからだ。できるなら違う仕事に変わりたいと思っている」「本当に私たちを尊重するのなら、来店しないでほしい」「店に来たとしても、素早く買い物を済ませ、余計なこと喋りかけようとせず、速やかに店から出て行ってほしい」と訴えている。

世界的に外出自粛が始まって1カ月あまり。これからも外出を控えるような期間が続くと、さらに精神的な影響が出やすくなっていくだろう。

ストレスが溜まっているとき、ルールを破っている誰かをターゲットとして見つけて攻撃することで、「良い行いをした!」という道義心を満したくなるかもしれない。しかし、それは本当に正義と呼べるのか、いったん留まって考え直してみる必要があるのではないだろうか。


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