最新記事

新型コロナウイルス

わざとコロナに感染しようとした受刑者たちの狙いと手口

LA Sheriff Says Inmates Infected Themselves With Coronavirus

2020年5月13日(水)16時30分
ジェフリー・マーティン

わざとコロナに感染しようとした受刑者は、どんな手を使ったのか(写真は、消防作業に駆り出されたカリフォルニアの受刑者たち) Lucy Nicholson-REUTERS

<カリフォルニアの刑務所で受刑者の感染が急増し、調べたところ、一部にわざと感染しようとする試みがあったことがわかった>

カリフォルニア州キャスティークにある刑務所「ピッチェス矯正施設」の受刑者が、4月に入り新型コロナウイルスにわざと感染しようと試みていたことがわかった。検査で感染が確認されれば保釈される、と誤解したからだと、ロサンゼルス郡保安局のアレックス・ビラヌエバ保安官は5月11日の記者会見で述べた。

施設内の監視カメラには、受刑者たちが1つのコップでお湯を回し飲みしたり、1枚のマスクをそれぞれの口と鼻に当てて息を吸い込んだりする様子が捉えられていた。さらに受刑者たちは、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の規則に従わず、あえて室内の狭いエリアに集まって座っていた。この件が起きてから約1週間後に、同施設に収容されている受刑者21人が、新型コロナウイルスの検査で陽性と判定された。

ビラヌエバによれば、受刑者たちがお湯を飲んだのは、施設の看護師が体温を測る前に発熱を装うためだったという。

「受刑者たちの間で、事実無根の噂が信じられていたようだ。感染者が出れば、接触のあった受刑者ごと釈放せざるを得なくなる、というのだ」と、ビラヌエバは述べた。「もちろん、そんなことはあり得ない」

だが感染の試みの後、施設内の感染者数は「顕著に増加した」と、ビラヌエバは言う。「感染対策はうまくいっているのになぜ感染者が急増するのか、理由がまったくわからなかった」

わざと感染しようとするのは、施設内のすべての人の安全を脅かす行為だと、ビラヌエバは批判する。

もっとも、どこも過密状態の全米の刑務所の中には、感染が広がるのを避けるために罪の軽い者から釈放や仮釈放を行なった例もある。ロサンゼルス郡も、暴力犯罪以外で収監されていた受刑者4000人以上を釈放した。それが、誤った噂につながったのかもしれない。

「我々は選択を迫られた」と、ビラヌエバは4月の時点で述べていた。「刑務所を過密状態にしておけば、感染症はあっという間に広がって、多くの命が危険にさらされるところだった」

(翻訳:ガリレオ)

<参考記事>過密状態の米刑務所は新型コロナウイルスの餌食
<参考記事>塀の中の新型コロナウイルス感染実態 米刑務所、次々「釈放」の波紋

20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中