最新記事

コンタクトトレーシング

経済活動の再開には「感染経路不明」を潰すことが不可欠

Without Tracing Exposure, “We’re Going to be in Big Trouble ”

2020年5月7日(木)17時50分
フレッド・グタール

経済活動の再開を求めるデモは全米に広がっている。メリーランド州の集会に参加した人々 Tom Brenner -REUTERS

<アメリカの一部では営業・外出制限の解除が始まったが、人が動けばウイルスも広がる。再び感染爆発を引き起こさないためには大規模な接触追跡が必要だ>

全米各地で経済活動の再開を求める声が高まるなか、一部の州は5月初めから徐々に外出制限などの緩和に乗り出し始めた。人々が職場に戻れば、それに伴ってウイルスも再び市中にばらまかれる。何も手を打たなければ、第2波の感染拡大が起き、ようやくひと息ついた医療現場はまたもや崩壊の危機に見舞われることになる。十分な医療を提供できなければ、死者数の急増は避けられない。

ロックダウン(都市封鎖)が解除されるたびにCOVID-19が暴れだし、またもや活動が制限される──人々を疲弊させる悪循環を防ぐには、接触追跡(コンタクト・トレーシング)が強力な武器になると、専門家は言う。誰かの感染が確認されたら、保健当局者がその人と濃厚接触した人物を突き止め、自主隔離を求める。小さな芽のうちに集団感染をつぶして、ニューヨーク市やニューオーリンズを襲ったような大規模な感染爆発を防ぐのだ。

各州知事は、経済再開と感染防止を両立させるため、大規模な追跡プログラムを導入し始めている。

<参考記事>「感染経路不明」を潰すため米各州が「接触追跡官」を数千人単位で募集

追跡に資金と人員を割け

しかし各州のばらばらな取り組みでは限界がある。第2波の封じ込めにはまさに戦時体制で保健スタッフを大量動員する必要があると、ジョンズ・ホプキンズ大学医療安全センターのクリスタル・ワトソン助教は言う。

ワトソンら保健政策の専門家チームの試算では、徹底した追跡を行うには、全米で10万人の専門スタッフと約36億ドルの資金が必要になる。チームは予算確保のため目下議会に働きかけて法案成立を目指している。

<参考記事>新型コロナウイルス、急拡大の背景に排泄物を介した「糞口感染」の可能性も

「予算をしっかりつけてほしい」と、ワトソンは言う。「全米規模での取り組みを早急に始めないと。追跡を行う州や地方自治体当局に、疾病対策センター(CDC)などの連邦機関が指針を示し、技術的な支援をする必要がある。そういう体制を整えることが(制限緩和の)条件になる」

追跡プログラムの効果と必要性についてワトソンに話を聞いた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノルウェーSWF、イスラエル資産運用契約を解約 ガ

ワールド

トランプ氏、プーチン氏と「手探り」の会談へ 領土交

ワールド

ウクライナ大統領、印・サウジ首脳と電話会談 米ロ会

ワールド

再送-ウクライナ大統領、サウジ皇太子と電話会談 平
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 7
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中