最新記事

コンタクトトレーシング

経済活動の再開には「感染経路不明」を潰すことが不可欠

Without Tracing Exposure, “We’re Going to be in Big Trouble ”

2020年5月7日(木)17時50分
フレッド・グタール

──大規模なプログラムを今すぐ実施するよう呼びかけているが。

これは前例がない取り組みだ。アメリカの公衆衛生の歴史でも、未曾有の大事業となる。既存の人員ではとても足りない。膨大な数の専門スタッフを投入する必要がある。

エボラ出血熱が猛威を振るったリベリアでは、保健当局が約1000人を投じて追跡を行なった。リベリア防衛省が軍の野戦病院を感染地に設置するなど全面的に協力したこともあり、この取り組みは成果を上げ、最終的にはウイルスの封じ込めにほぼ成功した。COVID-19でも、感染者の移動経路や接触者を徹底的に追跡することで、既に成果を上げている国がある。

──具体的な方法は?

保健当局の追跡スタッフが検査で陽性になった人に電話し、できれば発症の数日前から今までに接触した人たちについて聞く。発症前から感染するのが(COVID-19の)特徴だからだ。追跡スタッフは、感染者の友人や家族などに連絡し、公共の場で接触した可能性がある人たちにも広く注意喚起する。

──この業務を担うのは?

保健当局の職員だけではとうてい足りない。退職した職員や公衆衛生の専門家にも協力を呼びかけなければ。彼らにとっては、持てるノウハウを生かせる機会になる。感染対策に貢献したいと思っている退職者は多く、私の元には既に沢山メールが来ている。今の状況で頑張っている人たちに何らかの恩返しがしたい、自分も何らかの貢献をしたいと思っている人が大勢いるようだ。

無策では悲惨な事態に

──テクノロジーの活用については?

(スマートフォンのアプリなど)テクノロジーを使えば、感染者がまだ感染に気づかないうちにたまたま近くにいた人たちのことも分かり、その人たちに通知したり、その人たちを追跡することもできる。

──プライバシーの問題は?

保健当局に自分の行動履歴などを知られたくないのは分かる。保健当局には本人の承諾なしに個人情報を公表する権限はなく、公表すべきではない。ただ追跡に役立つ位置情報や行動履歴のデータは、保健当局が入手できるようにすべきだ。それによって、ウイルスにさらされた可能性がある人たちを突き止め、通知し、二次感染を防げる。保健当局者は職務上、様々な感染症に対応するため、本人が隠したがるような事柄を聴取することが多く、個人情報の扱いについても高いプロ意識を持っている。

──こうした対策なしに経済活動を再開したらどうなるか。

第2波をくい止める措置なしに、制限を解除したら、ウイルスは一気に広がる。混乱から立ち直る時間的な余裕がなかった医療システムはあっという間に崩壊するだろう。そうなればこれまでの何倍もの死者が出る恐れがある。残念ながら、見通しはかなり厳しい。

20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪CPI、11月は前月比横ばい コア高水準続き利上

ワールド

中国、台湾独立派3人に制裁 親族の入境も禁止

ビジネス

午前の日経平均は反落、年初急伸の反動売り 下げ渋り

ワールド

JAXA、H3ロケット9号機の打ち上げ延期 8号機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中