最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス、急拡大の背景に排泄物を介した「糞口感染」の可能性も

Coronavirus May Be Spreading So Fast Because of Fecal Transmission

2020年2月21日(金)14時55分
カシュミラ・ガンダー

同じアパートだが10階も離れた住人2人が新型ウイルスに感染し、配管を通じた空気感染も疑われたが(2月11日、香港) Tyrone Siu-REUTERS

<中国の研究チームが感染者の便からウイルスを検出したと報告、「糞口ルート」の感染可能性を指摘>

世界で2000人を超える死者を出している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、科学者たちは、排泄物を介して感染が広がる可能性があると考えている。

中国の保健当局が新型コロナウイルスの存在に気づいたのは2019年12月上旬。湖北省・武漢市の市場で働いていた複数の人が原因不明の肺炎を発症したことがきっかけだった。WHO(世界保健機関)が報告を受けたのは12月末で、その後、専門家たちが研究を行っているものの、いまだ感染経路は完全には解明されていない。

同ウイルスに感染すると熱や乾いた咳、息切れなどの症状を発症し、重症化すると死に至る場合もある。これまでに7万5000人を超える感染が確認されており、その大部分が中国本土に集中しているが、ほかにもアメリカをはじめ25を超える国や地域に感染が拡大している。WHOはこの新型コロナウイルスについて、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)といったその他のコロナウイルス同様に、咳やくしゃみの飛沫や、感染者およびウイルスが付着した表面との濃厚接触を介して広まるものと考えている。

だが一部の専門家は、これらに加えて感染者の排泄物を介してウイルスが広まる可能性もあると考えている。

感染者の便からウイルスを検出

中国疾病対策予防センターは2月15日に報告書を発表。この中で、黒竜江省北東部の19人の感染者の便から新型コロナウイルスが検出されたと明らかにした。報告書を執筆した研究者たちはこれを受けて、同ウイルスが「経口感染(糞口感染)する潜在的可能性がある」と考えている。経口感染とは、ウイルスが汚染された手指、食べ物や水を介して鼻や口、目から体内に入る感染ルートで、特にウイルスを含む糞便が手指を介して口に入る経路を糞口感染という。

研究者たちは、最も多いのは飛沫や濃厚接触を介した感染だが、それでは全ての感染例や「急速な感染拡大」の説明がつかないと主張。「このウイルスには数多くの感染経路があり、それが感染力の強さや急速な感染拡大の一因だと考えることができる」と指摘した。

17日には別の研究者たちが、論文審査のある学術誌「Emerging Microbes & Infections」に論文を発表。これも同様に、同ウイルスを含む糞便が口から体内に入ることで感染する可能性があることを示唆する内容だった。研究チームが同ウイルスの発生源とされる武漢市の病院で感染者178人の肛門から検体を採取したところ、ウイルスが検出されたという。

<参考記事>韓国激震、新型コロナウイルスで初の死者 感染急増100人超す

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は大幅続伸、初の5万円 政策期待や米

ワールド

米朝首脳会談、直ちに実現しそうにない=韓国高官

ビジネス

中国工業部門利益、9月は21.6%増 2カ月連続の

ビジネス

為替相場の過度な変動や無秩序な動き、しっかりと見極
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 6
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 7
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中