最新記事

東南アジア

超激混みの露天からクーラー付きの個室まで フィリピン、麻薬対策強化が招いた「塀の中の格差社会」

2019年4月11日(木)13時06分
大塚智彦(PanAsiaNews)

麻薬対策強化で刑務所はどこも超過密に

フィリピンでは2016年6月のドゥテルテ大統領就任以来、麻薬関連犯罪への「超法規的殺人」を含む強権的な捜査が続いており、逮捕されたり自首したりして裁判で有罪となった多数の麻薬密売人、麻薬使用者が全国の刑務所で服役している。

このため全国に482ある刑務所の大半が定員を大きく上回る収容者で想像を絶する過密状態にあるという。

2018年7月にBJMPが明らかにした報告書によると全国482刑務所の定員合計が20,653人なのに対し、服役囚は146,302人でその多くが麻薬関連犯罪で服役しているという。過密度ではハイチに次いでフィリピンが世界で2番目の劣悪な環境だという統計もある。

2018年3月の時点で南部タガログにあるカラバルソンにある刑務所は収容率975%という過密状態で、中ルソンの刑務所が802%、サンボアガ半島の刑務所は789%という状況だった。

また、2019年3月18日にマニラ首都圏ナボタス市の刑務所に新施設が完成したが、同刑務所はそれまで収容率2413%とフィリピン国内で最も過密な状態におかれていた。それでも過密度は738%というが、当局は新施設の完成で服役囚の環境改善に役立ったとしている。

"VIPルーム"も存在? 塀の中も金次第という現実

こうした過酷な環境に置かれているフィリピンの囚人たちだが、一方では刑務所内で特別待遇を受けている「VIP服役囚」も存在する。マニラ近郊のビリビッド刑務所では一部の服役囚が独房を勝手に改修してクーラーを設置。さらに携帯電話、ネット接続が可能な状態にして「優雅な独房生活」を送っていたのが2015年に摘発された。

こうした服役囚は刑務所職員に賄賂を渡して勝手気ままに服役生活を送っていたようで、外部から歌手やストリッパーを呼んで刑務所内でコンサートやショーを開催したり、勝手に外出して恋人や家族と面会したりと"塀の中も金次第"という実態が続いていた。摘発の結果、ビリビッド刑務所では刑務所の幹部職員3人が解任された。

こうした状況のなか、ドゥテルテ大統領の麻薬犯罪取り締まり強化で、全国の刑務所に服役囚が激増した結果、どこの刑務所も過密状態になってしまい、職員に対する賄賂や買収が依然として横行。携帯電話やタバコ、武器所持などが相変わらず続いていることが裏付けられた。

麻薬犯罪捜査の強化で逮捕者、自首者は依然として増加傾向にあるなか、フィリピンでは服役する刑務所施設がその服役者数に追いつかず、暴力や病気、差別が蔓延する過酷な環境になっており、新たな人権問題として浮上している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米1月PPI、前月比0.5%上昇に伸び加速 関税転

ビジネス

ネトフリ12%超上昇、WBD買収断念を好感 パラマ

ワールド

クリントン氏、エプスタイン氏の犯罪「全く知らず」 

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    習近平による軍部粛清は「自傷行為」...最高幹部解任…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中