最新記事

人権問題

同性愛や不倫行為は死刑、窃盗は手足切断! ブルネイ、イスラム式新刑法を4月3日から施行

2019年4月3日(水)12時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

アルコールは御法度の禁酒国、国王は大富豪

ブルネイは全土でアルコールの売買が禁止されている禁酒国としても有名。ブルネイ航空機ではアルコールは一切提供されず、かつては国内の中国料理店などで「スペシャル・ティー」を注文すると陶磁器の急須に入ったビールが密かに提供されたが、現在では国境を越えてマレーシア領まで行かないとアルコールは口にできないとされている。

面積は約6千平方キロ弱で三重県とほぼ同じ、人口はわずか約45万人という小国だが、豊富な石油資源を背景に、国民は医療費、教育費が無料で生活水準は東南アジア諸国連合(ASEAN)内でも高い。

ボルキア国王は世界有数の富豪で、首都バンダルスリブガワンにある王宮には1788室以上の部屋があり、車の運転が趣味でメルセデスベンツを531台、フェラーリを367台、ランボルギーニを20台、ポルシェ160台などを所有、高速道路を通行止めにして疾走することもある。また航空機の操縦免許も所持しており、ボーイングの旅客機を自ら操縦して外遊することもあるという。

ジョージ・クルーニー氏が批判


ブルネイを批判するジョージ・クルーニー NBC News / YouTube

米CNNなどによると、こうしたブルネイのシャリア法導入が「LGBT」への差別、人権侵害に繋がるとして俳優のジョージ・クルーニー氏が「人権に反する者に金銭を支払って支援する必要はない。無実の人びとの殺害に手を貸すことはしない」として、ブルネイ系列のホテルの使用中止を呼びかけているという。

具体的には米カリフォルニア州ロサンゼルスのベルエアーホテル、ビバリーヒルズホテルなどのほか英国、フランス、イタリアなどにあるブルネイ関連の9ホテルの利用ボイコットをファンや仲間、国際社会に訴えている。

またジョン・バイデン米前副大統領も「地球上の誰もが恐怖なく、誇りを以って生きる権利がある」としてブルネイの性的少数者への連帯を表明しているという。

「アムネスティ・インターナショナル」も「同性愛行為は犯罪ではない」としてブルネイ政府に新刑法の即時撤回を求めている。

ASEAN加盟国では、世界最大のイスラム教徒人口を擁しながらイスラム教国ではないインドネシア・アチェ州がシャリア法を導入しており、婚外性交や同性愛に対して公開むち打ち刑が執行されている。

しかしむち打ち刑は「教育的効果」を狙った公開刑とされ、ジョコ・ウィドド大統領ら政府も撤回を求めるなど議論が分かれている。

こうしたなか、ASEANでも政治的・経済的にほとんど影響力がなく、また課題もない「お客さん的存在」のブルネイで起きている「最も厳しい刑法の導入」に対し、今後ASEANの他の加盟国がどう対応するのか、注目されている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州8カ国に10%追加関税、トランプ氏表明 グリー

ワールド

アングル:冬季五輪控えたイタリア北部の景観地に観光

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中