最新記事

イスラム過激派

黒づくめにレプリカ小銃の幼児が軍事パレード? インドネシア、独立記念日の行進が議論に

2018年8月21日(火)18時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

衣裳さえ違っていれば微笑ましい光景になっていたのに── (c) CNN Indonesia / YouTube

<目元以外を黒い衣装に包んで小銃を手に練り歩く子供たち──。イスラム過激派に洗脳されたのかと目を疑う光景が白昼堂々と出現した>

インドネシア東ジャワ州のプロボリンゴ市で独立記念日(8月17日)を祝う記念カーニバルが8月18日に行われたが、その行進に参加した地元の幼稚園児が黒装束にレプリカ(模型)の小銃を抱えて歩いている様子がインターネットの動画サイトにアップされ、大きな問題に発展する事態になっている。

プロボリンゴ市の市庁舎周辺で始まった行進には市内の幼稚園児数十人が参加したが、目以外を覆う黒い「チャダル」と黒い衣装で全身を隠し、胸の前には模型の小銃を斜めに抱いて参加、市中を行進した。

道路の片側車線をふさぐ形の行進では中央に幼稚園児が並び、左右両側には母親や関係者とみられる大人が一緒に歩いている様子が動画からは確認できる。

園児の中には武器を持たず玩具の白馬にまたがった園児もおり、周囲を同行する母親らは笑顔で見守っている。

この動画を見たインドネシア人の間からは「黒装束に武器携行はイスラム過激派を連想する」「これはまさに中東のテロ組織IS(イスラム国)と同じではないか」などと急進派や過激派、テロ組織と関連付ける批判が相次いだ。

「幼稚園児にそこまでする必要があるのか」「誤った印象を与えかねない」とエスカレートする非難の嵐に地元警察がまず動き、カーニバル主催者と幼稚園の園長から事情を聴取した。

■参考記事:全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情

事態重視の政府は教育文化相を現地派遣

事態を重くみたジョコ・ウィドド政権は8月19日にムハジル・エフェンディ教育文化相をプロボリンゴに急派して市警本部長と会談するなど事態の把握に当たらせた。

警察の事情聴取に対して問題となった幼稚園のスハルタティック園長は「行進はイスラム教の預言者をテーマにしたものである。園児の衣装は予算がなかったので幼稚園にあった黒装束を着せたまでであり、過激思想を教えるとか伝えるとかそういう意図は全くなかった」と弁明した。

プロボリンゴ市警察本部によると通常道路を利用する行進には警察の許可が必要だが、今回の幼稚園児の行進は未許可だったという。

ニュースで騒ぎが大きくなり、同市に詰めかけた報道陣に対して警察、園長とともに記者会見したカーニバルの関係者は「騒がせる結果になって本当に申し訳ない」と謝罪の言葉を口にした。

現地入りしたムハジル教育文化相は地元メディアに対して「幼稚園は園児に過激思想を植え付ける意図は全くないということであり、深刻な影響はないだろうと思う」としながらも、「全ての教育機関は急進的思想、過激思想の危険な芽も摘まなくてはならない。そういった思想は外部からというより、内部から起きてくることがあるからだ」と教育現場で教育者による過激思想などへの的確な指導の必要性を強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

BMW、第3四半期コア利益率が上昇 EV研究開発費

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIとの合弁発足 来年から

ビジネス

中国、40億ドルのドル建て債発行へ=タームシート

ビジネス

トヨタが通期業績を上方修正、販売など堅調 米関税の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中