最新記事

中国外交

対北制裁決議&ASEAN外相会議に見る中国の戦略

2017年8月8日(火)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

フィリピンで開催されたASEAN外相会議の関連会合で Aaron Favila-REUTERS

中国は5日の対北朝鮮制裁国連安保理決議に賛成票を投じた。6日のマニラでのASEAN外相会議の関連会合では周到な根回しによりアメリカの存在を圧倒。米中首脳会談ではトランプ大統領の年内訪中を求めた。中国の戦略を読む。

また「これまでにない最も厳しい制裁」と国連安保理

北朝鮮の核・ミサイル開発に関して、8月5日、ニューヨークにある国連本部で安保理事会が開催され、北朝鮮に対する新たな制裁決議(2371号決議)が全会一致で採決された。つまり、中国もロシアも賛成票を投じたということだ。

国連のヘイリー米大使は、「これまでにない最も厳しい制裁」と胸を張ったが、いったいこれまで何度、「これまでにない最も厳しい制裁」と言い続けてきたのだろう。それを繰り返しては北朝鮮に核・ミサイル開発の余地を与え続けてきた。

今般も7月4日と28日に北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行ったばかりだ。

新たな制裁決議に対して北朝鮮は激しく反発し、7日、「米国がわれわれを圧殺しようとするならば、いかなる最終手段も躊躇しない」という旨の政府声明を発表した。

一方、中国の王毅外相は5日、中国もロシアも制裁決議に賛成したのは「中露ともに北朝鮮の核・ミサイル開発には反対しているからだ」とした上で、「制裁は必要だが、それは最終目的ではない。目的は朝鮮半島核問題を談判のテーブルに引き戻し、話し合いを通して最終的な解決方法を模索し、朝鮮半島非核化と安定に至らなければならない。中国は各関係者が、中国が提案している"双暫停"を受け入れることを希望している」と述べている(中央テレビ局CCTV)。ここで"双暫停"とは「北朝鮮は核・ミサイル開発を暫定的に停止すると同時に、韓国は米韓合同軍事演習を暫定的に停止すること」という、「二つの暫定的な停止」を指す。

マニラにおけるASEAN外相拡大会議で中国存在感

8月5日からフィリピンのマニラでASEAN(東南アジア10か国)外相(拡大)会議が開催された。6日からASEAN以外の「米、中、露、日、韓」なども参加し、東シナ海問題や北朝鮮問題なども討議した。

この討議で中国が勝利できるように、中国は早くからフィリピンを抱き込む戦略に出ていた。

まず今年6月29日に王毅外相は、5月10日に就任したばかりのフィリピンのカエタノ外相を北京に招聘し会談していた。中国外交部が「中比関係の輝かしい前途に通じる道」]というタイトルで報道している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中