最新記事

ファッション

オンからオフまで 英グレンソンの復刻ビンテージで足元を締める

2017年3月18日(土)10時00分
高橋一史 ※Pen Onlineより転載


ファッションを知る男の、伝統と改革の結びつき。

1866年に英国の靴の聖地、「ノーザンプトン(Northampton)」で創業し、いまなおこの地で手仕事の靴製造を続ける「グレンソン」。デザインディレクターとして関わり、のめり込むあまりに2005年に同社のオーナーになった人物が、ティム・リトル(Tim Little)です。来日したティムに、グレンソンとは何か、英国靴は実際に本国で愛されているのか、ロンドンの街事情についても語ってもらいました。

pen_kirushiru_12sub09.jpg

来日したオーナー兼デザイナー、ティム・リトル。

彼がよく口にした単語は「イノベーション」。変革させることが伝統の英国靴にも必要という考え方です。

「今回復刻した中に70年代のものもありますが、当時はアッパーとソールを簡単に接合していました。この点は改良すべきと考え、靴底の張替えができ履き心地もいいグッドイヤー製法に変更しました。このように、アーカイブの再現であっても良い方向を目指すのが私たちです」

広告業界にいた頃に「アディダス」などを担当し、靴の道に進んだティム。自身の靴ブランド「ティム・リトル」も、グレンソンと別にロンドンに店を構えています。伝統靴のマーケットが世界的に狭くなっていく中で、昔の勢いを失っていたグレンソンを再び表舞台に導いたのは、時代を読む力のある彼の功績です。では一般的に考えて、本場の英国では自国の靴がどれほど愛されているのでしょうか?

「そうですね、英国靴を好んで履くコアな人たちは確実にいますよ。ウィークデイは黒の靴を履き、休日には茶色を履くコンサバティブな人ですね。ただ、英国靴は価格が高い、という印象を多くの人が抱いているようです。米国製や日本製などの靴を履いている人のほうが数は多いかもしれません」

【参考記事】「グッドデザイン賞」が描き出す、デザインの未来とは。


pen_kirushiru_12sub10.jpg

「レショップ」の前でセールスマネージャー、ジョー・ハッチングスと語らうティム。

pen_kirushiru_12sub11.jpg

色鮮やかなティムの足元。

ティムが言葉を続けます。
「それでもここ10年で雰囲気が大きく変わってきました。メンズマーケットが伸びています。ファッションを楽しむようになり、色のついた靴を履く人が増えました。グレンソンは世代を越えて愛されるブランドですが、高価なものばかりというイメージがありました。それを払拭するために、カジュアルなライン『G2』も用意しています。英国以外で製造することでコストを抑えたリーズナブルなラインです。スニーカーの代わりに履いていただけるカラフルなデザインが多く、より若い層の支持を広げています」


pen_kirushiru_12sub12.jpg

ハイエンドモデルのアイコニックなディテールとして考案された、アーカイブからアイディアを得た現代デザインの「トリプルウェルト」。

pen_kirushiru_12sub13.jpg

層が重なったゴツいコバが、新鮮な表情。ウィングティップ ¥99,360

「ノーザンプトンの職人が手づくりするハイエンドな靴はつくり続ける」、と宣言するティム。彼のセンスを知りたくて、好きなファッションについても尋ねました。
「いま着てる『A.P.C.』や、『マーガレット・ハウエル』がいいですね。どちらも、シンプル&クラシック。グレンソンの美学とも共通しています。グレンソン以外の靴ですと、アディダスが好きです。『ガゼル(GAZZELE)』というモデルがお気に入り」


pen_kirushiru_12sub14.jpg

カジュアルライン「G2」も、若者を中心に大人気。¥41,040〜51,840


「東京は一番好きな街、ただしロンドン以外でね!」
と笑うティムに、東京よりロンドンのほうが優れていると思う点を尋ねてみました。
「ストリートファッション、音楽カルチャーでしょうか。最近はイースト・オブ・ロンドン周辺が面白い。センターの外側にある地域です。以前は危険なエリアでしたが、いまはクリエイティブで、ニューヨークのブルックリンのような雰囲気になってきてます」

さすがは広告業界出身の目線、といったところでしょうか。現代にあるべき英国ブランドの姿を追い求めるグレンソンから、この先も目が離せません!


※当記事は「Pen Online」からの転載記事です。

PenOnline





今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBはAI導入に伴う構造的な失業率上昇を相殺でき

ワールド

中国軍の汚職粛清、指揮系統・即応態勢に打撃=英国際

ワールド

トランプ氏「加齢で不安定化」、米世論調査で6割 共

ワールド

ウクライナ紛争、西側の介入で広範な対立に=ロシア大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中