最新記事

新冷戦

ロシアが東欧の飛び地カリーニングラードに核ミサイル配備?

2016年11月7日(月)18時00分
ウィリアム・サミュエル (米ヘリテージ財団)、ルーク・コフィー (同アリソン外交政策センター所長)

核搭載が可能な弾道ミサイル「イスカンダル」 Sergei Karpukhin-REUTERS

 NATOにとって極めて憂慮すべき事態だ。ロシアは10月初め、リトアニアとポーランドの間のロシアの飛び地カリーニングラードに、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデル」を配備した。

russia161108.jpg
バルト3国とポーランドにはさまれたカリニングラード。東はロシアだ Google Map

 カリーニングラードはバルチック艦隊の母港で、大規模な軍事施設が集中している。

 NATOはロシアへの抑止力強化を念頭に、17年以降にポーランドとバルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)で多国籍軍部隊を展開し、東欧でのミサイル防衛(MD)を強化することを表明していた。ロシアはNATOの決定を安全保障上の脅威とみなし、対抗してイスカンデルを持ち出してきた、というのが大方の見方だ。

【参考記事】ロシアがクリミアの次に狙うバルト3国

ワルシャワも射程内

 射程距離が500キロのイスカンデルは、ポーランドの首都ワルシャワ、リトアニアの首都ビリニュス、ラトビアの首都リガまで届く。改良で最大射程が700キロに延びた新型になると、ドイツの首都ベルリンも射程に収める。

 NATOがさらに懸念するのは、イスカンデルは通常弾頭の他に、射程が500キロ以下の核ミサイルや核弾頭などの「戦術核」を搭載できる点だ。イスカンデルの配備は1987年に米ソが署名した「中距離核戦力全廃条約」違反の恐れがあるが、ロシアは気に留める素振りもない。

 実際に核弾頭が搭載されているかどうかは明らかになっていないが、ロシアは過去にもMD防衛システムを配備する周辺国に対して核攻撃の可能性をちらつかせて脅した経緯があり、今回もまた脅しである可能性は払拭できない。

【参考記事】バルト海に迫る新たな冷戦


 ロシア政府は、イスカンデル配備は一時的なもので軍事演習の一環と説明した。確かに似たようなことは以前もあったが、今回は配備の規模が大きい。NATO加盟国は、ロシアがいよいよカリーニングラードに核兵器を実戦配備するのではないかと警戒を強めている。

 エストニアのリホ・テラス国防軍司令官は、ロシアの動きについて「(ロシアが)バルト海沿岸での支配力を強化し、軍備を増強する」計画の一環だとみる。

 これは根拠のない空論ではない。カリーニングラードは長年バルト海の東岸でロシアが進めるA2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略の要衝として機能しており、イスカンデルには大規模な軍事部隊や軍事基地、都市などに命中する精度がある。

【参考記事】もし第3次世界大戦が起こったら

 NATO加盟国はイスカンデル配備を激しく批判した。だがNATOがミサイル発射の脅威にどう対抗するのかは不明だ。仮に新たな抑止策が可能になっても、NATOとロシアの対立が一層高まることは避けられそうにない。

This article first appeared on The Daily Signal.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英スタンチャート、25年税引き前利益が16%増 C

ビジネス

高島屋、特損計上で一転赤字予想に CB買い入れと消

ビジネス

中国、日本企業に軍民両用品の輸出禁止 三菱重や川重

ビジネス

アングル:日鉄の巨額CBが示す潮流、金利上昇と株高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中