最新記事

ロシア

ロシアがクリミアの次に狙うバルト3国

今になってバルト3国の独立承認を再検証する意図は

2015年7月3日(金)19時45分
ルーシー・ドレイパー

視線の先は 旧領土の奪還を視野に入れているプーチン Grigory Dukor-REUTERS

 1991年に当時のソ連がバルト3国の独立を承認したのは合憲だったか違憲だったか、ロシア検察庁が再検証の作業に入った。

 ロシアのインタファクス通信の報道によると、ロシア連邦議会の議員2人が、検察庁にあらためて調査するよう求めたという。独立を取り消すつもりとも受け取れるこの動きに、リトアニアの外務高官は「ばかげた挑発だ」と反発している。

 リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国は、1940年からソ連が崩壊する91年までソ連領だった。3国共、独立後はユーロに参加し、西側の一員としてやってきた。ラトビアとエストニアは多くのロシア系住民を抱えているが、リトアニアではロシア語を話す住民は比較的少ない。

 先週ロシアでは、似たようなケースで「違憲」の判断が示されたばかり。ロシアは54年ウクライナにクリミアを譲渡したが、検察庁は先週これを「違憲」だったと判断した。昨年のロシアのクリミア併合を追認するような判断だ。

 クリミア併合は国際的な非難を浴びているだけでなく、ウクライナ政府とウクライナ東部の親ロシア派との戦闘は今も続いている。

バルト海で繰り返される演習は攻撃準備か

 バルト3国の緊張も高まっている。ロシアはバルト海周辺で軍事演習や訓練を繰り返し、バルト3国から見ればロシアはますます危険で挑発的になっている。今年2月、エストニアの国防研究機関のマーティン・ハートは、ロシア陸軍の演習はますます頻繁になっており、バルト3国に対する攻撃準備の一環という気がする、と言う。

 ウクライナ紛争が始まって以降、NATO加盟国では、ロシアの戦闘機が領空に接近してスクランブルをかけた回数が過去最高に増加している。最近では、アメリカがポーランドとリトアニアに戦闘車両や重火器を配備する計画に対し、ロシアは戦力増強で対抗する意欲を見せた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中