最新記事

南シナ海

アメリカは「中国封じ」に立ち上がれ

中国が実効支配を広げる南シナ海の領有権紛争にアメリカが積極的に関与すべき4つの理由

2015年5月27日(水)14時51分
プラシャント・パラメスワラン

中国が建設中の人工島周辺に米軍の艦艇や偵察機が派遣される可能性が浮上 Mass Communication Specialist 2nd Class Conor Minto-U.S.Navy

 中国が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島に人工島を建設するなどして領有権の拡大を主張している問題をめぐり、アメリカがついに積極的な行動に踏み出すかもしれない。

 米メディアは先週、アメリカ政府が人工島の周辺に偵察機や艦艇を派遣して、中国に直接的に対抗する選択肢を検討している、と報じた。折しもアメリカでは、南シナ海での領有権紛争をめぐる政府の対応が不十分だとの議論が巻き起こり、より大胆な関与を求める声が上がっている。

 アメリカはなぜ、南シナ海の領有権問題にあえて積極的に踏み込むべきなのか。その必要性を4つの視点から整理したい。国益への影響を含む広い意味での重要性を理解しておかないと、議論が個別の提案の是非に矮小化されかねないからだ。

 従来よりも大胆な関与が必要な第1の理由は、南シナ海の情勢がアメリカの国益に深く関わることだ。

 この地域が地政学的に重要だという意味だけではない。領海侵入や埋め立て工事を強行する中国の振る舞いは、アジア太平洋地域におけるアメリカの国益を著しく損ない、領海と海洋資源をめぐるルールや航行の自由、領有権問題の平和的な解決への脅威となる。

 地域の同盟国に及ぼす悪影響も大きい。しかもこの問題は、世界と唯一の超大国アメリカが中国との関係を保ちながら、彼らの領有権拡大の野心にうまく対応できるかを占う重要な試金石でもある。

 第2の根拠は、従来の南シナ海政策が十分に機能していない点にある。

 オバマ政権がこの1年ほど中国を牽制する言動を繰り返してきたことは評価されるべきだが、中国の方針を転換させたり、東南アジア諸国を安心させられるほどの成果は挙げていない。中国は相変わらず人工島の造成をはじめとする領有権拡大の活動を加速させ、国際法を無視し続けている。

 中国の動きが速過ぎるあまり、アメリカの対応が追いついていないという課題もある。こうした状況を考えれば、アメリカの目的を達成するために従来とは違う戦略が必要なのは明らかだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イスラエル、ガザ停戦協定の履行再開と表明 空爆で1

ワールド

印パ衝突、250%の関税警告で回避=トランプ氏

ビジネス

英住宅ローン承認件数、9月は予想上回る 昨年12月

ビジネス

熾烈な自動車市場、「アニマルスピリット」必要=メル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 7
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中