最新記事

エネルギー

米海軍の「海水燃料」がもたらす大変革

海水から作る画期的な新エネルギー技術は将来、米軍艦隊の石油依存と兵站の問題を解決しそうだ

2014年4月9日(水)16時07分
クリストファー・ハーレッス

ゲームチェンジャー 原子力空母ジョージ・ワシントンが「海水燃料空母」に変わる日も近い? Reuters

 米海軍の科学者たちは数十年の歳月を経て、ついに世界で最も難解な挑戦の1つを解決したかもしれない。それは、海水を燃料に変えることだ。

 液化炭化水素燃料の開発によって米軍は、将来の石油燃料への依存を軽減する可能性を持ち、「大変革をもたらすもの」として歓迎されている。そうなれば、軍艦は自ら燃料を作りだし、海上で燃料補給する必要がなくなり、常に100%の状態で任務に当たることが可能になる。

 米海軍研究試験所によれば、新しい燃料は当初、1ガロン(約3.8リットル)当たり3〜6ドルほどのコストがかかると見られている。同試験所はすでに模型飛行機の飛行実験を済ませている。

 海軍が所有する288の艦船は、核燃料で推進するいくつかの航空母艦と72の潜水艦を除き石油に頼っている。この石油依存を解消できれば、石油不足や価格の変動から軍は解放される。

「非常に画期的だ」と、海軍中将のフィリップ・カロムは言う。「われわれはかなり難しい時期におり、エネルギーを生み出す新たな方法と、いかにエネルギーを評価し消費するかに関する方法の革新に迫られている。安価な石油を無制限に消費できた過去60年のようにはいかない」

次の課題は大量生産

 今回の革新的な進歩は、科学者が、海水から二酸化炭素と水素ガスを抽出する方法を開発したことで実現した。ガスは、触媒式排出ガス浄化装置を使って液体にする過程で燃料に変えられる。

「海軍の挑戦はかなり変わっていてユニークなものだ」と、カロムは言う。「燃料を補給するのにガソリンスタンドに行くわけではない。ガソリンスタンドである補給艦が私たちの所に来る。海水を燃料に変える画期的な技術は、兵站のあり方を大きく変えるものだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中