最新記事

ヘルス

スマホが若者のうつ症状を増やしている(かもしれない)理由

The Unhappy iGeneration

2019年4月8日(月)17時20分
カシュミラ・ガンダー

研究では高齢者に鬱症状や自殺傾向の増加は見られなかった RYANKING999/ISTOCKPHOTO

<SNSとゲームが普及したために、減ってしまったものがある>

学術誌ジャーナル・オブ・アブノーマル・サイコロジーに発表された論文によれば、アメリカでは2000年以降、鬱症状や自殺行動が見られる若者の割合が急増している。研究チームは、SNSに費やす時間が増えて睡眠時間が削られていることが問題ではないかと考えている。

研究によれば、過去1年間に鬱症状を経験した12〜17歳の若者の割合は、2005年の8.7%から2017年には13.2%に増加。18〜25歳でも、2009年の8.1%から2017年には13.2%に増えた。

過去30日間に深刻な気分の落ち込みを経験した10代後半の若者は、2008年の7.7%から2017年には13.1%に増加。自殺を考えたり、計画したり試みたことがある18〜19歳の若者は、2008年の8.5%から2017年には12.4%に増えていた。

論文の筆頭著者であるサンディエゴ州立大学のジーン・トウェンジ教授(心理学)は「(若い世代の)メンタルヘルスの問題がこの10年ほどで非常に増えていることに驚いた」と語っている。

高齢の世代には、こうした傾向は見られない。トゥエンジは、メンタルヘルスの問題が増加した原因は本研究では特定できないとしつつも、この時期に「高齢者より若い世代に影響を及ぼした変化が1つある。スマートフォンとデジタルメディアの普及だ」と語る。

「若者の余暇の過ごし方は根本的に変わった。友人と会う時間や睡眠時間が減り、SNSやゲームなどに費やす時間が増えた」。精神医学では若者の睡眠時間は10時間あってもいいというが、実際には減り続けている。

睡眠時間が減れば「心の免疫力」が下がる。デジタルメディアの使用はほどほどにして、健康的な睡眠を確保したい。

<2019年4月9日号掲載>

20190409cover_200b.jpg

※4月9日号(4月2日発売)は「日本人が知らない 品格の英語」特集。グロービッシュも「3語で伝わる」も現場では役に立たない。言語学研究に基づいた本当に通じる英語の学習法とは? ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)「日本人がよく使うお粗末な表現」、マーク・ピーターセン(ロングセラー『日本人の英語』著者、明治大学名誉教授)「日本人の英語が上手くならない理由」も収録。


ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中