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20円の物を収蔵し、100万円の物を収蔵しない? 国立民族学博物館の収蔵庫で考えた「物の価値」とは【民博特集3/4】

2025年9月30日(火)10時30分
ミンパクチャン

照明の傘から始まって、上から下に向かって清掃していく。掃除機や立体吸着ドライシートを使用し棚を拭く。

また、害虫被害の点検も定期的に行われる。標本資料係のスタッフがほぼ全員参加する。大きな収蔵庫では2〜3日、小さな収蔵庫でも丸1日はかかる。


「虫は収蔵庫だけではなく、展示場にも発生します。だから展示場の資料も点検が必要な
んです。民博の本館展示は露出展示のものがほとんどです。こまめに点検しないと虫の発
生にすぐに気づくことができません」

虫の発生場所を把握するトラップ調査が年に4回行われるのは先述のとおりだ。収蔵庫も展示場も対象にして、虫の数や種類を確認している。30年以上のデータを蓄積しているので、異変があれば早めに対応できる。

「虫の知らせです。民博に湧く虫は文化財害虫と言われるわけですが、文化財だけを選んで食べる虫なんていませんから」

それはそうだ。うちのセーターを食べる虫は貴重な民族衣装だっておいしく食べるだろう。

20円でも受け入れる、100万円でも断る:物の価値とは?

最後に末森先生に気になっていたことを聞いてみた。34万7000点もの資料を収蔵する民博。その大半はいわば生活の延長にある品だ。文化財や国宝、名画といった、わかりやすい価値のあるものではない。それならば、ここに収蔵するべきか否かという価値はどうやって決まるのだろうか?

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