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睡眠6時間が2週間続くと集中力は酩酊状態以下!? 自覚のない睡眠不足による深刻なダメージ

電車の優先席で居眠りをする高校生たち

睡眠不足のほかにも問題のある電車内での居眠り TAGSTOCK1 - iStockphoto


あなたは睡眠不足かもしれない。堺市教育委員会指導主事で「みんいく」と呼ばれる睡眠教育に取り組んでいる木田哲生さんは「ペンシルベニア大学の研究によると、6時間睡眠を2週間続けると2日間徹夜したのと同じレベルまで集中力が下がるという。しかし、慢性的な睡眠不足を自覚できていない人は多い」という――。

※本稿は、西野精治・木田哲生『最高のリターンをもたらす超・睡眠術』(大和書房)の一部を再編集したものです。

慢性の睡眠不足は自覚しにくい

「毎日しっかり眠れていますか?」。

大人向けの睡眠面談でこのように尋ねると、「まあまあ、普通に眠れています」という言葉がよく返ってきます。「では、昨夜は何時に寝ましたか?」と重ねて訊くと、「○時頃だったと思うけど......」「スマホを見ながらいつのまにか寝落ちしてしまったのでわからないです」など、返事は曖昧です。

しかし、みなさん決まって最後にこうおっしゃるのです。「でも大丈夫、仕事はできていますから」。毎日忙しいのだから、そんなものだと思っているのかもしれません。しかし、脳の働きは決して「大丈夫」ではありません。

睡眠と脳の働きに関して、ペンシルベニア大学などの研究チームが行った有名な実験があります。この実験から得られた結果は、「6時間睡眠を2週間続けると、集中力や注意力は2日間徹夜した状態とほぼ同じレベルまで衰える」という驚くべきものでした。

2日間徹夜した人は、「自分は徹夜したから頭が働かない」と自覚できます。しかし、6時間睡眠を2週間続けた人は、頭が働いていないことを自覚できず、むしろ「普通に頭は働いている」と感じます。もしかして、あなたもそうなのではないでしょうか。

ちなみに、徹夜した人の脳の働きは、酎ハイを7~8杯飲んで酔った状態だといわれています。2日間の徹夜となると、それ以上の酩酊(めいてい)状態です。つまり、6時間睡眠を2週間続けている人は、毎日、酔っぱらった状態のような脳で、しかもそれに気づくことなく仕事や勉強、社会的な活動などをこなしているわけです。

睡眠不足による体の異常は察知しやすくても、脳への影響はそれだけ自覚しがたいということです。

仕事で大きなミスをしかねない

徹夜などによる短期的な睡眠不足には、誰でも対処しようとします。「今日は早く寝よう」「お風呂にゆっくり入って、体を温めよう」「お酒はやめておこう」など、今できる精一杯の工夫をするでしょう。「徹夜で疲れた」「頭も体も回復させたい」と切実に感じ、明日も脳を最高の状態にしてバリバリ働きたいと思うからです。

こうした短期的な睡眠不足には気づきやすいのですが、中長期に及ぶ慢性的な睡眠不足には気づきにくいものです。そのため、集中力が低下している状態にも気づきにくく、そのまま仕事や作業を続けていると、ミスやヒヤリハットが発生しやすくなります。やり直すチャンスがあるならば挽回もできますが、とり返しのつかない事故を招いてしまうようなケースも実際にはたくさん起こっています。睡眠不足による脳のパフォーマンスダウンを自覚できないことは、とてもリスキーだといえるのです。

集中力は、仕事や学業で結果を出すために欠かせないものだと、みなさんよくご存じだと思います。ただ、パフォーマンスが高い人のことを「あの人は集中力がある」という言い方をすることもあり、集中力とは生まれつきの能力のようにとらえられている面があるのではないでしょうか。しかし、そうとは言い切れないようです。

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