最新記事
ヘルス

睡眠6時間が2週間続くと集中力は酩酊状態以下!? 自覚のない睡眠不足による深刻なダメージ

2023年4月24日(月)16時45分
木田哲生(堺市教育委員会 主任指導主事) *PRESIDENT Onlineからの転載

私はこれまで、子どもたちの睡眠を改善するための「みんいく」(睡眠教育)を行ってきました。その実践研究を通してわかったのは、睡眠と学習への意欲や集中力には相関関係があるということです。

実践研究の詳細は後述するのでここでは簡単に触れますが、自分が「何時に寝て何時に起きているかを知る」だけで、日々のパフォーマンスがよい方向へ変化します。みんいく調査実施中学で、みんいくを始める前の年と、みんいくに一年間取り組んだ年を比較したところ、「授業に集中できている」と肯定的にとらえた生徒は、1年生で72.5%から85.5%に、2年生で72.5%から78.3%、3年生で77.1%から81.5%に改善しました。

これまで教育の現場で子どもたちを見てきた立場からも実感できるのですが、日々の過ごし方によって発揮できる集中力は大きく変わってきます。集中力を生み出す重要な基盤が睡眠であることが、調査で浮き彫りになったのです。

睡眠不足の4つのサイン

子どもの学習への意欲や集中力と睡眠との相関関係と同じことが、大人にもいえます。

朝、会社に着いた時点でもう眠いという経験はないでしょうか。それは明らかに睡眠不足が慢性化している証拠です。そのような状態で仕事に打ち込んでも、集中力不足、パワー不足で本来の力を発揮するのは難しいでしょう。

そこで、まずみなさんに実践していただきたい最初のアクションは、ご自身の睡眠不足をチェックすることです。慢性化すると気づきにくい睡眠不足ですが、昼間の生活から寝不足のサインをチェックできます。睡眠不足のサインには、次の4つがあります。


【睡眠不足の4つのサイン】
①朝起きてから4時間後に眠気がある
②昼間にだるさ、しんどさを感じる
③電車や車の中で居眠りをする
④休みの日に普段より2時間以上長く寝る

①「朝起きてから4時間後に眠気がある」に当てはまる人は、かなりの睡眠不足と考えられます。一般的に、起床4時間後というのは強く覚醒している時間帯だからです。おそらく朝の目覚めがスッキリしない状態のまま仕事や作業に取り組むため、午前中の頭の働きに支障があるうえ、②「昼間にだるさ、しんどさを感じ」やすくなります。

そうすると、③「電車や車の中で居眠りをする」といったことも日常化します。この③は国際的な眠気尺度であるエプワース眠気尺度の一つで、「座って人と話していると眠気がある」「座ってテレビを見ていると眠気がある」などもチェックポイントになります。

そして、④「休みの日に普段より2時間以上長く寝る」が習慣になると、後述しますが、睡眠にとってたいせつな「リズム」が狂い、さらに睡眠不足の悪循環に陥ってしまいます。

「たかが睡眠不足」が、慢性的な集中力不足を招きます。それは、集中力だけにとどまらず、脳の働き全体の低下につながっていきます。今まで当たり前と思ってきた日常の行動を見直し、少し意識を変えるだけで気づけることもたくさんあります。今日という日を、毎日の睡眠を変えていくスタートにしましょう。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 関税措置

ワールド

米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中