インド政府が大型間接減税発表、米と貿易対立続くモディ氏の政治的足場強化も

インド政府は16日、2017年に導入した物品・サービス税(GST)の最大規模となる改正を10月に実施し、課税負担を大幅に軽減すると発表した。デリーで15日撮影(2025年 ロイター/Altaf Hussain)
Nikunj Ohri Aftab Ahmed Aditya Kalra
[ニューデリー 17日 ロイター] - インド政府は16日、2017年に導入した物品・サービス税(GST)の最大規模となる改正を10月に実施し、課税負担を大幅に軽減すると発表した。財政圧迫につながる恐れはある一方、企業は高く評価しており、トランプ米政権が輸入品に課した関税を巡って対立を続けるモディ首相のイメージアップにもつながるとの見方が出ている。
GSTは間接税制度の全国統一化を図る目的で導入されたが、複雑な仕組みであることが批判を浴びていた。
今回提示された改正案では、4段階の税率のうち自動車や電子製品などに適用する最も高い28%の区分が廃止され、12%の適用品目のほぼ全ては5%に税率が下がることで多くの消費財や加工食品などがその恩恵を受ける。
政府のデータによると、28%と12%の課税区分合計で年間GST収入の16%を生み出しており、減税はコストを伴う。
IDFCファースト・バンクは、減税は今後1年間の国内総生産(GDP)を0.6%ポイント押し上げる半面、州と連邦政府に年間200億ドルの歳入不足が生じると試算する。
ただ、ニューデリーに拠点を置くオブザーバー研究財団のラシード・キドワイ研究員は、減税で低迷する株式市場の心理が改善し、モディ首相にとっては東部ビハール州における重要な選挙を前に政治的な得点が得られると分析。「GSTの減税は、人口の3─4%しか納めていない所得税減税と異なり、全ての人々に効果をもたらす。モディ氏は、米国の政策に起因する重圧にさらされる中でこれを実行しようとしている」と指摘した。
その上で、今やインドには多くの個人投資家がいるため、政治的にも大事な株式市場にとってGST減税は追い風になると予想している。
ビハール州は11月までに議会選挙を実施する予定。最新の世論調査では、雇用不足が理由で野党の支持率がモディ氏の与党よりもやや高くなっている。
ある専門家は「どんな減税も国民全般から歓迎されるが、当然ながら(GST減税の)タイミングは純粋に政治的緊急性で判断されている」と述べた。