晩餐会と「ご婦人方のベッド」を征服...19世紀に実在の「セレブシェフ」が題材の『カレーム』はバカバカしくて最高
Deliciously Preposterous

カレームとアガットは仕事仲間以上の関係に APPLE TV+
<19世紀に実在した料理人がスパイとして暗躍。史実ガン無視のApple TV+ドラマ『カレーム 宮廷料理人』はぶっ飛んだ絶品エンタメ──(ネタバレなし・あらすじ・レビュー)>
幕開けから10秒もたたないうちに、セクシーな美青年がホイップクリームを指ですくい、うっとりとした表情の若い娘の口に差し入れる。アップルTVプラスで配信中の歴史ドラマ『カレーム 宮廷料理人(Carême)』は、こんな露骨なシーンのオンパレードだ。
でも楽しい。史劇なのに史実を無視した演出に目をつぶれるなら、特に楽しめる。
主人公はオートキュイジーヌ(フランスの高級料理)の草分けで、「史上初のセレブシェフ」と称される19世紀の料理人アントナン・カレーム(Antonin Carême)。ドラマはカレーム青年がパリで晩餐会とご婦人方のベッドを征服していく様子を描く。
原作はイアン・ケリーによる評伝『宮廷料理人アントナン・カレーム』だが、「原作」とは名ばかりだ。
近年アップルTVプラスはフランス発の作品に力を入れてきた。今回は関係者全員が、世界の視聴者に「フランスらしさ」──美食とお色気とナポレオン──を存分に味わってもらおうと考えたらしい。
脚本チームは素材を大胆に料理した。本作のカレームは食事系のパイを洗練させ、白いコック帽を広めた伝説の料理人であると同時に、冷徹な政界フィクサー、シャルル・モーリス・ド・タレーランの下で働くスパイなのだ。