最新記事

映画

コロナ危機の今こそ見るべきパンデミック映画7選

Pandemic Films in a Pandemic

2020年5月7日(木)18時30分
北島純

ハッピーエンドのゾンビ映画なら、ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』(2013年)はどうだろう。

従来のゾンビが遅い動きなのに対して、この映画のゾンビ(Z)はものすごく足が速い。ブラピが演じる主人公は国連の元捜査官で、米大統領も死亡し文明が崩壊しようとする最終世界大戦のさなか、洋上の空母に避難した国連事務次長に頼まれZ誕生の真相を突き止めようとする。

撮影時のドタバタにもかかわらず、この映画を魅力的にしているのは卓越したブラピの演技力。同じくウイルスで人類がほぼ絶滅する世界を描いたテリー・ギリアム監督の怪作『12モンキーズ』(1996年)出演時とは段違いだ。

ウイルスではないが病原菌は宇宙人とも共演する。トム・クルーズが主演したスティーブン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』(2005年)は、宇宙人による地球征服寸前に、地上のバクテリアに耐性がなかった宇宙人がバタバタと倒れ人類が救われる、というストーリー。コロナ禍の現在、細菌に救われる話は微妙かもしれないが。

「人類2度消滅」の衝撃

ウイルスを悪用して権力を奪取した独裁者を逆に倒すという映画はどうか。ウォシャウスキー兄弟(当時)製作・脚本の『Vフォー・ヴェンデッタ』(2006年)は、収容所での人体実験で開発されたウイルスをばらまいた看守一味が、時間差でワクチンを提供して大儲けするだけでなく、社会不安をあおって政治権力を握り独裁政権を樹立する。実験台にされた男が復讐に立ち上がる筋書きは一定のカタルシスを与えてくれるが......人間不信に陥るかも。

ウイルスとの闘いというスペクタクルだけでなく人間愛の称揚、加えて救いとカタルシスが感じられるパンデミック映画はないのか。あった。小松左京原作、深作欣二監督の『復活の日』(1980年)だ。

東ドイツの陸軍細菌戦研究所から持ち出された細菌兵器の輸送中に飛行機が墜落。あっという間にウイルスが拡大する。「イタリア風邪」と命名された強力な感染力と毒性を持つこのウイルスに各国政府はなすすべがなく、1982年秋、人類は全滅する。しかし、極寒環境ではウイルスが不活性化することから(地球温暖化が進んでいなくてよかった)、南極大陸の基地要員863人と原子力潜水艦の乗組員だけは生き延びていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7、中東情勢が最重要議題に 緊張緩和求める共同声

ワールド

トランプ氏、イスラエルのハメネイ師殺害計画を却下=

ワールド

イスラエル・イランの衝突激化、市民に死傷者 紛争拡

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中